サッカー現場発

「ジャンボ」大久保哲哉“7部”でもこだわる現役

神奈川県社会人リーグのFIFTY CLUBでプレーするFW大久保哲哉(手前左から2人目)
神奈川県社会人リーグのFIFTY CLUBでプレーするFW大久保哲哉(手前左から2人目)

「ジャンボ」の愛称で知られ、横浜FCなどでプレーしたFW大久保哲哉(39)が、今季から神奈川県社会人1部のFIFTY CLUBで現役を続けている。

同クラブでは、FW永井雄一郎(40)とともにプロ契約選手としてプレー。大久保は既に5試合に出場し、5得点3アシスト。ほぼフル出場を続けている。「メチャメチャ、体がキレてます(笑い)。これだけ先発で出るのは16年以来。毎試合出ることで、体もキレてくる。体重は変わっていませんが、自分の体を見て変化を感じます」と充実した笑顔を見せた。

   ◇   ◇   ◇

大久保は駒大卒業後の03年に横浜FCからプロ生活をスタートさせた。柏レイソル、アビスパ福岡、モンテディオ山形などを経て、昨季はJ3ザスパクサツ群馬でプレーした。190センチの長身を生かし、J通算で99得点を挙げたが、昨年末に群馬との契約が満了。「100得点を達成するまではやめられない」とJでの活動の場を求めトライアウトも受けた。しかし、3月初旬まで待っても、Jクラブからのオファーは届かなかった。現役引退もささやかれた中、神奈川県社会人リーグでの現役続行を決意した。J1から数えれば「7部」に相当するカテゴリーだ。それでも現役にこだわった理由を聞くと、こう答えた。

大久保 最初は自分もJしか探していませんでした。Jが開幕してもオファーはなかった。それでもFIFTY CLUBからお話をいただいて。自分をプロとして必要としてくれるクラブがあるならと。活動場所が横浜であることも大きかった。現役をやめれば、Jでの100得点の可能性は0%になりますが、続けることで、もしかしたら0・1%にはなるかもしれない。自分はプロに入ったころ、39歳までやれるとは夢にも思わなかった。毎年積み重ねていってだと思うし。FWなので、結果を出し続けなければいけないし、助っ人で補強されるポジションでもある。残っていくのは大変ですけど、まだやれる自信もあるという思いで決めました。

練習環境はJリーグとは異なる。FITY CLUBはプロ契約の大久保と永井以外は、昼間に仕事を抱えている選手がほとんどだ。タクシーの運転手、学校の教員など、職種もさまざまだという。Jリーグでは午前練習が主流だが、チームの練習は火曜日と木曜日の2回。午後8時、もしくは午後9時開始だ。「午後9時からの練習では、午後11時終了です。自分は、そこから居残りでシュート練習をやるので、午後11時半に終わるんですよ。その後は、普通に寝られない(笑い)。厳しいですけど、与えられた環境の中でどう結果を出すかというところで、やると決めています」。横浜FC時代も、居残りシュート練習を欠かさなかった。環境が変わっても、大久保のFWとしてのルーティンは変わらない。

現役選手の一方で、今年から、コーチとして活動の場を広げている。神奈川・三浦学苑サッカー部のテクニカルアドバイザーに就任し、高校生の指導を始めた。今年、A級ライセンスの取得を目指しており「自分でやって見せたり、どうやったら(生徒に)伝わるかなど、気付くことがたくさんありますよ」と話す。

特に高校生には「武器を磨くこと」を伝えたいという。大久保自身、横須賀高校時代に長身が際立っていたが、ヘディングが苦手で、コーナーキックではキッカーを務めていたほどだった。だが、高校2年の時、当時の横須賀高校のコーチだった元日本代表の藤島信雄氏が「高さは武器になる」と助言し、そこから徐々にヘディングを練習するようになった。この武器は大久保をプロの道へと導いた。「何かに突出した選手の方が魅力があると思う。下手でも足が速かったら魅力だし。うまい選手は、自分が子供のころから多かったけど、うまいなら、うますぎ、ぐらいにならないといけないと思うんです」。さらに、こう続けた。「プロとは違いますけど、勝ち取っていくことで見えない景色が見られる。僕もやっぱり、プロになれたから、カズさんや自分がテレビで見ていた人たちとプレーできた。勝ち取っていかないとプロになれないわけだし。それが何の道でも、勝ち取っていくことで、自分が想像していなかった景色が見える。勝ち続けても、後悔はつきもので、その後悔を最小限にするために頑張っているわけで。やらないで逃げるのでなく、チャレンジしないと次に進めない。1歩踏み出す勇気も伝えられれば」。

FIFTY CLUBに活動の場を移したが、横浜FCなどかつて所属したクラブのサポーターが引き続き、応援に駆けつけてくれる。プロ契約選手としての自身の役割を「全試合出て、チームを勝たせること」と即答した。「試合出て活躍することが一番。そのために、監督も契約してくれたと思うし。(関東リーグに)上がるために必要だと思うから取ってくれたと思う」。39歳。同学年の選手たちがユニホームを脱いでいく中、まれな存在になったが、現役にこだわる気持ちは増している。「Jリーグの夢は持ち続けようかなと持ち続けます。契約してくれるクラブがあるならいけるところまでいきたいですね。今年で最後とは言わない。そのために、プロとして試合で結果を残すことで自分も長くできるし、それは勝ち取っていくものだと思うから」。高校生を指導し、初心に戻ったジャンボが再び輝き始めている。(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)

◆岩田千代巳(いわた・ちよみ) 名古屋市生まれ。95年、入社し主に文化社会部で芸能、音楽を担当。11年11月、静岡支局で初のスポーツの現場に。現在、川崎Fなどを担当。

神奈川県社会人リーグのFIFTY CLUBでプレーするFW大久保哲哉(中央)
神奈川県社会人リーグのFIFTY CLUBでプレーするFW大久保哲哉(中央)

日刊スポーツのサッカー担当記者が取材現場の空気を熱く伝えます。

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