熊本地震で被災したJ2熊本が、明日15日の千葉戦(フクアリ)で約1カ月ぶりにリーグ戦に復帰する。13日は熊本市内での練習を公開。リーグ戦5試合が中止となり、2日の全体練習再開後も90分間の実戦をこなせず、コンディション不足は否めない。それでも選手たちは「倒れるまで走る」と、死力を尽くして復興の活力になる覚悟をみせている。

 2日後の復帰戦へ気力がみなぎった。紅白戦では元日本代表FW巻誠一郎(35)が接触プレーでしばらく起き上がれないほどの激しさがあった。「仲間が(千葉戦に)懸ける意欲、思いは大きい。あれが当たり前。怖いならプレーしないでいい」。周囲をヒヤリとさせた巻は平然とした顔でチームの高い士気を喜んだ。

 紅白戦で主力組のボランチに入ったMF上村周平(20)も千葉戦を待ち焦がれる1人だ。ジュニアユース、ユースと熊本の下部組織で育った。地震で最も被害の大きかった益城町(ましきまち)在住で、一時は避難所生活や車中泊を強いられた。しばらくは「サッカーを考える余裕がなく生きていくのがやっとでした」と言う。だが、ボランティアで訪れた避難所で「いつも応援しています」と逆に励まされ、奮起。全体練習から「やらなきゃいけない」と気持ちを切り替えた。

 地震の影響で全体練習を再開できたのは2日で、練習試合は8日に1人最大45分間プレーしただけ。清川浩行監督(48)は「シーズン前のキャンプを見ている感じで、これから練習試合に行けるかなというところ。90分間ゲームをしていないので前半耐えても後半は未知数」とコンディション不足は覚悟している。それでも「選手は倒れるまで走るという気持ちでいる。それが救い」と希望を抱いた。

 本拠地うまかな・よかなスタジアムでの試合再開は7月3日C大阪戦とする方向で調整中で、直接勇姿を見せるのはもう少し先だ。今日14日で地震から1カ月。徐々に進む復興を共に支え、走り続ける-。そんなメッセージを明日のピッチから発信する。【菊川光一】

<熊本の地震以降>

 ◆4月14日 練習後、午後9時26分「前震」

 ◆15日 全体練習

 ◆16日 午前1時25分「本震」。全体練習が中止となり、29選手中19人が県外に脱出

 ◆17日 京都戦(西京極)中止

 ◆19日 熊本FW巻らが益城町の避難所で、約30人の子どもとサッカー

 ◆21日 チームミーティングを開き、5月15日千葉戦(フクアリ)でのリーグ戦復帰を決定

 ◆23日 横浜FC戦(うまスタ)中止

 ◆25日 自主トレ開始。選手14人、スタッフ12人が参加。DF槙野ら浦和、神戸から選手6人も現地入りし、サッカー交流会に合流

 ◆29日 山形戦(NDスタ)中止

 ◆5月2日 全体練習再開

 ◆3日 愛媛戦(うまスタ)中止、U-23(23歳以下)日本代表の手倉森監督が熊本の選手たちを激励

 ◆7日 札幌戦(札幌ド)中止

 ◆8日 地震後初の練習試合実施

 ◆15日 復帰初戦のアウェー千葉戦

 ◆22日 ホーム水戸戦(柏)

 ◆28日 ホーム町田戦(未定)