株式会社「Pathosion」の取締役を務める水戸ホーリーホックMF高岸憲伸(24)が30日、東京・練馬中で自身のキャリアについて語った。

水戸のスタッフが同校でキャリアについて講演をする機会に、高岸がゲストとして参加。その豊富な社会経験を中学1年生約160人に伝えた。

川崎フロンターレの下部組織から石川の強豪・星稜、中大を経て水戸入り。昨季はルーキーながら24試合に出場した。順風満帆なサッカー人生だが、今年IT企業を立ち上げて、取締役に就任した。

現役のJリーガーとして働く傍らで、IT企業を展開。星稜の先輩、本田圭佑のようなキャリアを歩む。「今日は水戸ホーリーホックの選手ではなく株式会社Pathosionの人間として来ました。副業としてサッカー選手をやっているという“てい”です」と笑った。

高校卒業後、プロサッカー選手になることを一度諦めた。それでもサッカーは大好き。サッカーに関わる仕事に就こうと決意し、サッカークラブを作りたいと考えた。高校時代のスタッフらにも相談すると、クラブ経営を学ぶためにも4年は必要だと伝えられた。それなら大学4年間を使って経験を積もうと考えて、サッカー部員として活動しながら、さまざまな取り組みを行った。

中大サッカー部1年時には、兄の母校でつながりのあった東工大サッカー部の監督を務めた。東工大サッカー部の朝練習をしてから、中大に帰って授業に出て、自分の練習。「今思うと狂ったように動いていました」。

2年時には知り合いからオファーを受けてシステムエンジニアとして働いた。この頃からトップチームで試合に出場するようになり、一度は諦めたプロサッカー選手を再び目指した。「本気で努力してチームの一番の選手になろうとしました」。4年時には水戸の特別指定選手になり、見事プロサッカー選手になった。

そんな経験をもとに、生徒たちにはこう伝えた。

「目標に向かってトレーニング、努力することで、なりたい自分になれる。いろんなことに挑戦して、いろいろな経験をして、自分の好きなことができるように努力をしました」

「サッカー選手なのに…」「サッカーに集中しろ」。さまざまな声はある。主力として戦った昨季から監督が変わり、今季は4試合の出場にとどまる。サッカー選手としてのキャリアで悔しい思いを持ちつつも、ITの力で茨城を盛り上げるためにデュアルキャリアを続ける。「午前中に練習をして、筋トレやケアを終えて夕方からパソコンをカタカタしています」。ITの力を活用してサッカーの拠点である茨城の経済を盛り上げたい。ウェブ制作やEC支援、広告支援などを展開している。

モットーがある。「何かを成し遂げるためには、情熱と誇りが必要」。「いろいろなことをやってきましたけど、やっていることに誇りと情熱を持つことが絶対に必要だと思います。いろんなことにチャレンジすることが大事。自分がやりたいことに自信を持ってほしい」と熱く語りかけた。

生徒にそう訴えつつ、自身もレベルアップをやめない。「小中の先輩の田中碧選手や三笘薫選手が日本代表で活躍している姿を見て、あそこに立ちたいな、みんなから応援されたいなって思います。ぼくが日本代表になったら、皆さん見にきてください」。さまざまな夢を持つ中学1年生に、自身の夢を宣言。起業家・高岸憲伸が切り開くキャリアから目が離せない。【佐藤成】