<FIFAワールドカップ2026(W杯)北中米大会:日本2-2オランダ>◇1次リーグF組◇6月14日(日本時間15日)◇ダラス・ダラススタジアム
日本代表(FIFAランキング18位)が、W杯北中米大会1次リーグ初戦でオランダ代表(同8位)と2-2で引き分けた。2度のリードを許しながら、追いつく粘り強さを発揮し、格上相手に価値ある勝ち点1。日刊スポーツの担当記者がゲームの機微や舞台裏に迫る「Nikkan eye」。今回は、FW前田大然(28=セルティック)の左シャドー(トップ下)“サプライズ起用”について掘り下げる。
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スタメン発表を見て、前田とMF中村のポジションが分からなかった。どちらが左ウィングバックで、どちらが左シャドーなのか。キックオフ時の立ち位置で判明。前田が左シャドーに入っていた。
前田の役割はシンプルかつハードだった。相手右センターバックのファンヘッケ、右サイドバックのドゥムフリス、そしてMFデヨングを「監視」すること。まさに1人3役。前線からのプレスで、ファンヘッケのロングパスを封じつつ、献身的なプレスバックで攻撃力自慢のドゥムフリスの駆け上がりをけん制した。また中盤のデヨングを背中で消し、展開力を抑えることも任務の1つ。時には右ウィングのFWシュメルビルまで潰しに行った。
前田自身はこう振り返っている。「チーム全体として、仕掛けさせないというところを意識しました。3枚を見ることはできるし、後ろが出てくるより前でやれる方が後ろに穴があかない」。
W杯において左シャドーの適任者探しが1つのテーマだった。アジア最終予選ではMF南野拓実、3月の英国遠征では三笘薫がそれぞれファーストチョイスとして活躍。しかしケガで選外となり、その代役と目されていたMF鈴木唯も右鎖骨骨折により出遅れた。5月31日のアイスランド戦はMF伊東や中村、FW後藤も本大会に向けてテスト。ただ完全にフィットしたとは言えなかった。
そこで抜てきされたのが背番号11の韋駄天(いだてん)だった。22年W杯カタール大会では3試合で1トップのスタメンを飾ったが、左シャドーは初先発。森保監督は親善試合を含めて1度も見せなかった「秘策」を勝負の局面でお披露目してみせた。
前田はカタール大会後は、左ウィングバックが主戦場だった。三笘、中村に次ぐ3番手。しかし今回は「結構早い段階で分かっていた」とシャドー起用が温められていたことを明かした。ある程度ボールを持たれることが想定される格上相手に3度追い、4度追いできる存在は貴重だった。
攻撃面でも武器がチームを助けた。押し込まれる展開で、スピードを生かして序盤に複数回、相手守備陣の背後に抜けだしたシーンがあった。ライン間で受けたがる従来のトップ下像とは異なる特長で相手に警戒感を与えた場面だった。
中5日で迎える第2戦チュニジア戦はどうか。押し込む展開が予想されるため、守備力はそこまで問われない。むしろ仲間と有機的に関わって崩していくタイプが適している。復活の鈴木唯なのか、1列上げての中村なのか。「誰が出ても勝つ、誰と組んでも機能することを目指して戦ってきた」と森保監督。突出した個に頼ることはない。状況に応じた最適なメンバーで勝ちに行く。【佐藤成】


