東京ヴェルディの城福浩監督(65)が、失敗を血肉にする。
12日、次節の柏レイソル戦(14日、東京・MUFG国立)に向けたメディア取材に応じた。開幕戦の川崎フロンターレ戦(1-1)で後半51分にミスから同点とされた一戦について、チーム内で「ロジカルに」共有したことを明かした。
■土壇場で出たミスを踏まえて
1-0で勝利目前。右サイドからのクロスボールを帰陣したMF平川怜がクリアしようとしたところ、当たり損ねて逆方向のゴール前へボールが転がり、FWロマニッチに押し込まれた。
「勝ち点3がすり抜けたっていう、最後の決定的なシーンを見逃して話をするわけにいかないので共有しました」
そこはチーム課題として捉え、全員で確認し合った。
「オンザボールのミスは誰しも起こる話で、誰しもがミスをしようとしてプレーしているわけじゃない。あのシーンも含めて、じゃあ我々のバイタルエリアへの準備が1試合通してどうだったか? ということに僕らは注目した。前半から、もっと言えば失点の後にも最後に危ないシーンがあった。そういう意味では97分(後半52分)のシーンがバイタルエリアへの戻りが一番早かった。ということは、それは体力の問題じゃない。意識の問題だと。1秒早くそこへの意識がいくことで、ああいうようなミスも防げたんじゃないかと思います」
前半にも川崎Fの右サイドバック、山原怜音に右足のミドルシュートを浴びた。GKマテウスがセーブし、こぼれた球をDF林尚輝が滑り込みながら右足でクリアした。相手も詰めていたところだけに、間一髪で回避した。
「バイタルエリアへの戻りのおそらく2歩、3歩の準備のところ。そこは共有しました。そのミスした当事者を晒し者にしたって何の意味もない。みんなが勝つために必死でやってる中で起きたことをどういうふうにチームとしてプラスに変えるか。我々に課された課題だと思ってるので、そこはロジカルに共有しつつも、もう1つは、こういうゲームをしたからこそ、次がどういうゲームをするかってすごく問われてる。個別に呼んだりとか、いろんなアプローチでやれることを今やってる最中です」
■柏のポゼッションにリスペクト
そして迎える相手は強豪の柏だ。昨年はまったく歯が立たず、カップ戦とリーグ戦で4度戦って1分け3敗。得点2に対し、失点は8という散々な結果だった。テンポ良く、選手たちが立ち位置を変えながらボールを動かしていくポゼッション型に翻弄され続けた。
ただ今年半期の百年構想リーグでは、持ち味のハードワークが冴え渡り2戦2勝。風向きは変わった。そして迎えた新シーズン2戦目、今後を占う意味でも大事な一戦となってきそうだ。
「百年構想リーグもそれ以降の練習試合も含め、柏のやり方っていうのはすごく一貫していますし、それはもうリスペクトに値します。ただ、我々がリスペクトし過ぎるということではなくて、自分たちがどういう守備を表現したいのか。自分たちが相手に関わらずどういう奪い方をしたいか、どこで追い込みたいかというところが甘いと、やはり彼らの可変システムが際立つような状況になる。ここは可変だから我々がどうするっていうことではなくて、我々がどのような立ち位置からどのような守備をして、どういう奪い方をしたいか。奪った後、柏が嫌がるような攻めは何なのかというところは、軸を自分たちにおいてそこはやることが大事になる。もちろん百年構想リーグのシーンも含めていい題材になると思うので、あくまでも自分たちがやろうとしていることをどれだけやりきれるか。もう1つは、(柏は)例えばウィングバックにしてもセンターバックにしてもシャドーにしても、左右が全く同じキャラクターじゃない。そのキャラクターの中で、チームの統一感と個々の特長を出すというところが大事かなと」
受け身になって差し込まれることなく、自陣ゴールから遠い位置で果敢にボールを奪い、攻撃につなげていく。そんなイメージを強調した。
■エース染野が攻守に存在感増す
そんな戦い方のカギを握るのが、最前線で守備のスイッチ役となるFW染野唯月だろう。川崎F戦では前線からボールを追い、守備に貢献した上でカウンター攻撃の軸となった。激しく相手と競り合いながら縦パスを収め、後方から攻め上がる時間を作るタスクもこなした。さらには得点場面ではアシストも記録しており、ゴールこそなかったがチームへの貢献度は計り知れないものがある。
そのエースは、課題とされた「回復力」が飛躍的に伸びている。回復力とは、つまり攻守両面にハードワークをこなせるということ。守備に走った後、さらに攻撃にも飛び出していける。スプリントを続けられるための「回復力」ということだ。
「そこにさえいれば彼はやれる選手なので。それは空中戦も、キープも、左右の足を振ることも含め、そこにいるってことは体が動かなきゃいけないので、それはある程度やれてきている」
「そこ」とは大事なオンザボールの局面だ。チームにとっては唯一無二の9番。だからこそ、染野の仕事を軽減すべくチームワークも求められる。
「例えば、ヘディング競るのをすべて彼に任してとかいうふうになると、これはやはり過負荷になりますし、本当にに仕事をしてほしい時に彼がそこにいられないっていう状況にもなるので、もちろん我々は背後へと、あと彼を中心としたロングフィードからセカンドで拾うところと地上戦と、この3つをうまく使い分けていくっていう意味ではチームとしてもっといいバランスが取れると思います。もう1つは、彼以外にも競れる選手がピッチに立っていくというところが、ここから先は非常に大事なことになるかなと思います」
短期的に改善できる点もあれば、辛抱強くほかの選手の成長やコンビネーションの深まりを持って課題解決につながるものもある。
■「牛歩のごとく成長していく」
試合結果はもちろん大事だ。しかし一喜一憂はしない。15試合ぐらい終わった時に、ようやく他クラブとの順位を考慮するという。
「今は1試合をどうやって勝ち点をつなげていくか、そのためのクオリティであったり、インテンシティーであったり、後から入ってくる選手の心構えであったり、最後のゲーム運びっていうのを1つ1つ全員がこう、牛歩のごとくではありますけど、成長しながら勝ち点を積み重ねていく、これしかないと思います」
自らの言葉をかみしめるように、のみこんだ。【佐藤隆志】



