お酒を飲めない人生なんて考えられない。特に、五輪取材中では、唯一の娯楽を取り上げられるようなもの。それが選手村では「禁酒」の規制が張られる。過去も原則的に禁じられていたが、どこかで販売していたり、持ち込みも可能だったが、今回は全面的に禁止だ。

　イスラム圏ならいざ知らず、ここは水よりウオツカの消費量が多いといわれるロシア。だが、その分、酒のマイナス面も十分認知されている。先日も酒の飲み過ぎで、ロシア国民の４分の１の人が５５歳未満で死亡するとのデータが発表された。飲酒大国だからこその厳しさなのか。

　酒に対して厳戒態勢が敷かれる選手村では１９２０年代の米国の禁酒法時代さながらの雰囲気が漂う。あの手この手を使い、酒を入手するため、涙ぐましい努力をする。紙カップに焼酎を詰めて選手村に「密輸」したり、報道陣からの「横流し」をもくろむ関係者もいる。ある選手は「肝臓が良くなった」と強がり、あるコーチは「禁断症状が出る」と嘆く。

　適度な飲酒はストレスを和らげ、ときには人間関係をスムーズにする。国際オリンピック委員会（ＩＯＣ）の方々、メダルの祝勝時くらいは「禁酒法」を解除してください。【田口潤】