伊藤華英のハナことば

危機乗り越えるため「自分勝手」やめよう/伊藤華英

ゴールデンウイークとはいかなかった今年のゴールデンウイーク。私の中では、思考を巡らせるいい時間になった。何がモチベーションかといえば、世界中が同じ状況だということだ。


3月19日、東京五輪聖火引き継ぎ式での井本直歩子さん
3月19日、東京五輪聖火引き継ぎ式での井本直歩子さん

先日、競泳の先輩である、井本直歩子さんの記事を読んだ。井本さんは、アトランタオリンピック日本代表であり、国連児童基金(ユニセフ)職員である。現在は難民、移民の教育支援にギリシャにおいて行っている。3月にアテネで行われた聖火引き継ぎ式に現地で急きょ抜てきされた方だ。

実は、私にとって井本さんがセカンドキャリアを歩んでいく中でも、ロールモデルでもあった。そんな私に影響を与えた先輩の今回の記事の内容は、「日本人」としての、自分を考えられる記事だった。

現在は世界中がクライシス。ギリシャも外出禁止や罰金制度が発令されおり、住民はみんな命を守るために従っているという。「普通の生活を望んでいる人はいない。家にいることが当たり前。外から日本を見るとなんで自分勝手なの」と書かれていた。


今は「個人」が重視される時代。パーソナリティーが必須になってきて、個人でSNSのアカウントを持ち、発信することが自由になり、世界との距離が近くなった。手軽に他人の体験や経験を身近なものとして感じられる。それがいいのか悪いのかはわからないが、井本さんはさまざまなことを自身で体験し、経験しているからこそ、その言葉が重く感じられる。


私は、人間1人1人に「権限」があると思っている。生まれたての赤ちゃんだって意思や感情はある。その権限は、社会の一部である、世界の一部である。誰しも必要な人間だということだ。自分勝手な自己主張とは異なるように思う。

東日本大震災の時は、世界の友達から「日本は大丈夫なのか」「心配している」と連絡が来た。外から見たら、どんな人でも「日本人」として見られる。1人1人の考えや行動が影響しないわけがない。この状況に、ナショナリズムについて強く考えるのだ。

日本で生まれたこと、教育を受けてきたこと、日本語を話してきたこと、そのアイデンティティーはさまざまかもしれない。日本人としての自分とはどんなものなのかを考えてもいい。

新型コロナウイルスがある程度、収束したとしても、きっと今までと同じ生活にはならない気がする。大変な時代になったと思うかもしれない。パラダイムシフトだってありえる。今までの当たり前が当たり前でなくなるかもしれない。


私は、現役時代から海外遠征などで多くの国へ行った。兄弟や親戚はオーストラリアに住み、「日本」と「海外」を常に意識してきた。

オリンピックに出場したときは不安だった。他の国の言葉が飛び交う中で緊張し、ドキドキしていた。でも日本人の応援する人を見た時、ホッと安心した。「ああ、私は日本人なんだ」。そう感じたのを今でも覚えているし、その感覚がとてもうれしかった。


こんな時期だからこそ、過去を振り返り、未来のために考えることができる。まずは目の前のことに対処し、同時に周囲の人たちがハッピーになれる行動、言動を意識する。日本のこの危機をワンチームで淡々と乗り切って、次の時代への準備をしたいと、最近は思う。

(伊藤華英=北京、ロンドン五輪競泳代表)

競泳界で「美女スイマー」として活躍し、北京、ロンドン五輪に出場した伊藤華英さんが、水泳に限らずさまざまなスポーツの魅力をアスリート目線でお伝えします。
 ◆伊藤華英(いとう・はなえ)1985年1月18日、埼玉県生まれ。01年世界選手権で初の日本代表入り。08年北京五輪で背泳ぎ2種目出場、12年ロンドン五輪で自由形リレー2種目出場。12年秋に現役引退。順大大学院博士後期課程修了。日大非常勤講師。173センチ。

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