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情熱のキリンから人事のプロを招聘/JFA改革・上

<日本サッカー協会(JFA)須原清貴専務理事に聞く(上)>

18年3月に日本サッカー協会(JFA)の専務理事に就任した須原清貴氏(53)。現職に至るまで、キンコーズ・ジャパン代表取締役兼CEO、ベルリッツ・ジャパン代表取締役社長、ドミノ・ピザ・ジャパン代表取締役兼COOなど、名だたる企業のトップを歴任してきた、経営のプロフェッショナルだ。就任から約1年半、「組織づくり」という点に着目し、これまでの成果とJFAが抱える今後の課題を聞いた。

日本サッカー協会専務理事の須原清貴氏
日本サッカー協会専務理事の須原清貴氏

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須原氏いわく、当初思い描いていたゴールへの実現度は5割程度。達成できたことは主に<1>人事部の創設、<2>経営企画部の復活、<3>プロモーション部の立ち上げの3点だ。中でも人事部を発足させるに至っては、人事部長を転職サイトで公募するなど、革新的な手法で世間の注目を集めてきた。しかし結果的に、人事部長はスポンサー企業であるキリンからの出向を受け入れるという形をとった。そこに至る経緯には、サッカー界発展のためのパートナーとして40年間を共に歩んできたキリンの知られざる“情熱”があった。

須原氏がJFAに参画した際にあがった課題のひとつに、経営メンバーの強化があった。須原氏と同じ次元でディスカッションができる、いわば「壁打ちの相手」(須原氏)を求めていたのだ。どんな人材を経営メンバーに誘おうか。不足しているエレメント(要素)を考えたとき、真っ先に上がったのが人事機能だった。

ここから、JFA内部には存在しなかった“人事のプロフェッショナル”発掘作業が始まった。転職サイト「ビズリーチ」で公募したところ、応募総数は約1500通。企業名は明かせないというが、各界のエリートから履歴書が届いた。しかし、須原氏は迷った。この優秀な人材が、果たしてサッカー界にフィットするのか? サッカー界に引き入れることが、彼らのキャリアにとって最善の選択となるのか-?

そんな悩みを抱えていたのと時を同じくして、東北地方でキリンとJFAが共催するイベントがあった。その晩、須原氏はキリン役員に思い切って悩みを打ち明けた。社会人の先輩として、何かアドバイスをもらえたらと考えたのだ。その席で話題に上がったのが、キリン社内にある人事交流制度の話。世界有数のメーカーであるキリンが、JFAに人事のプロフェッショナルを送り込んでくれようというのだ。フランクな会合の席で、あくまで求めたのは「アドバイス」のはずだったが、先方からは「ソリューション」が帰ってきたのだった。

話はとんとん拍子に進み、キリンの人事担当の役員が候補者の履歴書を持って日本サッカー協会の入るビル、JFAハウスを訪れた。申し分のない経歴に須原氏は萎縮したというが、先方の「JFAと人事交流をする以上、万全の自信をもつ人材しか出せない。社長の磯崎功典を含むキリン経営陣の総意です」という情熱を受け止め、藤川宏人事部長がここに誕生した。

強力な“人事のプロフェッショナル”が加わったJFAは、人事部、経営企画部、プロモーション部と新たな部署を設立させていった。須原氏が推し進める組織改革の裏には、サッカー界への惜しみない支援を続ける、キリンの情熱があった。(続く)【杉山理紗】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)

◆須原清貴(すはら・きよたか)1966年(昭41)6月18日生まれ、岐阜県出身。慶応義塾大学法学部法律学科を卒業後、91年に住友商事へ就職。00年に米ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得。01年ボストン・コンサルティンググループに転職しコンサルタントを務め、03年1月にはCFOカレッジを設立、同代表取締役社長に就任。その後、GABA取締役副社長兼COO、キンコーズ・ジャパン代表取締役社長兼CEO、ベルリッツ・ジャパン代表取締役社長、ドミノ・ピザ・ジャパン代表取締役兼COOを歴任した後、18年3月から現職。息子の影響でサッカーに興味を持ち、現在3級審判員資格を保有している。

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