いくつになっても人は変われる-。アーチェリー男子で五輪2大会でメダルを獲得した山本博(59=日体大教)からは、そんな姿を感じ取れる。20日に横浜市内であった記録会で、男子リカーブの部(72射、720満点)に出場して641点をマークした。目指すべき点数とはまだ開きがあるが、「この延長で努力していけば良いのかなと期待が持てる」。還暦間近になっても向上心は尽きない。
昨年11月下旬に会った時は違った。常に前向きに取り組む姿が印象的だった山本が、珍しく弱音を吐いた。「弱くなった自分を見せるのが恥ずかしいよ」と言ったことが忘れられない。 20年夏には「胸郭出口症候群」の手術をした。それ以降思うように点数が伸びなかった。「手術明けから試合で650点以上を取れていないんだよ」。
21年、20年は「どん底」にいた。全日本選手権は2年連続予選敗退。「競技を続けている自分がなかなか想像できない」「人前に見せられない」「下手になった」とネガティブな言葉がどんどん出てくる。
それでもアーチェリーから離れることはなかった。むしろ、どうやって状況を改善するか必死に考えていた。知り合いのボディービルダーの助言を頼りにプロテインバーとアミノ酸飲料を取ったり、肩を鍛えようとチューブを使ったトレーニングを取り入れたり。日体大で教壇に立ちながらアーチェリー場で部員たちと共に汗を流した。
地道な努力が実り肩まわりの強度が上がると、弓を以前のように引けるようになった。横浜市内での記録会後には「筋肉痛を感じるようになった。筋肉がついてきた証拠だね」と、うれしそうに変化を語っていた。
今年10月には還暦を迎えるが「クラス分けがないところで頑張りたい」。孫ほど年が離れた20代、30代といった選手たちとレギュラーツアーでしのぎを削る男子ゴルフの尾崎将司(75)を尊敬している。尾崎のように若い世代と張り合う。今季の目標は全日本選手権での復活を遂げ、日本代表に返り咲くことだ。
五輪では84年ロサンゼルス大会で銅メダル。その20年後の04年アテネで大会での銀メダル獲得時、「20年越しで3位から2位になったから、次の20年後(24年パリ)に金メダルを目指したい」と言った。今も山本はその言葉を現実にしようと、トレーニングに打ち込んでいる。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)



