中京大4年だった昨季限りで現役引退を決断した磯辺ひな乃(23=岐阜)が、競技者として演技した。

17年ユニバーシアード冬季大会3位など国際大会でも活躍した実力者は、冒頭の3回転ルッツ-2回転トーループなどを着氷させて79・46点の個人10位。今春に中京大大学院に進学したという。演技後に現状や思いを聞いた。【聞き手=松本航】

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-演技後は苦笑い

磯辺 2本目のダブルアクセル(2回転半)は「跳べる」と思っていたら跳べなくて「あぁ、やってしまったな」と。現役の時みたいにうまくはいかないですよね。しょうがないです。

-春からは

磯辺 海外のアイスショーのオーディションも受けさせていただいたんですが、コロナで…。同時に大学院を受けていて、そっちが合格していたので、大学院に行っています。コロナで7月ぐらいから週1とか、2週間に1回とか滑らせてもらっていたんです。

(中部)ブロックの時に連盟さんのお手伝いをさせていただいていて、岐阜の方に「(国体予選に)出る?」と言ってもらいました。見ていたらみんな楽しそうだし「じゃあ、出ます!」と言って、こうなっています。

-練習状況は

磯辺 (10月に)岐阜の国体予選に出させてもらった時に60点(60・79点)しか出なくて「うわ、ショート(プログラム)の点数だ…」って思って、この2週間ぐらい頑張りました。でも、2週間では戻らなかったです。

-なぜ出ようと思った

磯辺 大学院で陸上のトレーニングを研究されている方と話をしていて「絶対にトレーニングしたら、ジャンプ力が上がると思うんだよね。実験台になってよ」って言われて、9月ぐらいから週1で、体幹だったり、きついトレーニングをやっていたんです。それもあって、出てもいいかなと思いました。

-どんな研究内容

磯辺 私がやっているのは物理的な感じで、映像を撮って、ジャンプの動作がどうなっているのかという、応用形のことをやっていますが、トレーニングのことも面白いですよね。全く練習していなくて跳べないところから、どれぐらいジャンプが上がるかとか、結構面白いんですよね。体幹だったり、スクワットで重りをつけたり、私も現役の時だと「そんなこと嫌だ…」って思うことを、やっています(笑い)。

私自身、現役に戻る気はないので「ブロックとか、全日本とかを目指すレベルにはなれない(戻れない)かな」と思っています。

-現役への欲は

磯辺 結局これでちょっとできるようになったからといって、現役でやったとしても、ずるずる続けて「スケートが嫌い」となるまでやる。それなら、自分がまだ「スケートが楽しい」と思えるタイミングで、やめるべきかなと思っています。「楽しい」と思えるところで、ストップしておこうと思います。

-2年間の大学院でやりたいことは

磯辺 研究のテーマは決まっていて…。私自身、ループジャンプを跳ぶのに5年かかったんですよ。ループってフィギュアの中で「際立って変わったジャンプだな」って印象があります。一番回転不足が取られやすいジャンプだと思っていて、回転のかけ始めとか、降り方とか、結構微妙なラインがあって。そのジャンプの「回転不足をなくすためには、どういう動作をすればいいのか」というテーマです。

実際にクリーンで跳べた選手を対象に跳んでもらって、ちゃんと跳べたものと、回転不足だったものに、どういう違いがあるのかが分かれば、確実に「こういう風に動いていれば跳べるよね」となると思うんです。そこが分かれば「3回転ではなくて、4回転の時は、それを極めたらできるんじゃないか」というところまで、つなげられるかなと思っています。ありがたいことに中京大には、いい選手がたくさんいるので「協力してください」と今、言っています。

-スケート界の今後にも生きる研究

磯辺 自分が苦労したことを、これからの子たちに、どれぐらい伝えることができるのかな、と思いますね。他がうまくて魅力的な選手がたくさんいる中で、そこ(ジャンプ)がクリアできないと、どうしても勝てない。そこは私も「どうにしかして、何かできないかな」と思います。