ラグビーの聖地・花園(東大阪市)はこの春からサッカーと併用になる。J3にFC大阪が昇格。3月に開幕し、4月は毎週末いずれかの公式戦が組まれる。一般的にラグビーの芝は長く、サッカーは短い。併用は可能なのか-。
昨年末から急増したハトの対策も含め、管理業者の担当者に聞いた。
◇ ◇ ◇
同じ「フットボール」でもラグビーとサッカーは競技性が異なる。屈強な男が8人対8人でスクラムを組むラグビーは足元を踏ん張るため、芝は耐久性があり長いのが一般的。逆にサッカーは、ボールを速く転がすために短く刈り上げる。昨年4月から東大阪市花園ラグビー場を管理する東興産業の扇誠さんは、このように明かす。
「前回のラグビー・ワールドカップ(19年W杯日本大会)で快進撃を見せたように、最近の日本はパワーではなく日本人の特徴を生かしたスピードで勝負する傾向があるようです。そのため、走るのに(芝の)抵抗がないように代表のヘッドコーチからも『芝を短く刈って欲しい』と要望があるほど。国立で開催されるラグビーのテストマッチも(長さ)約22ミリ。近年はJリーグの試合でも併用できるレベルになっています」
確かに19年W杯で準々決勝に進出した日本は、快速WTBの福岡堅樹(21年に引退)と松島幸太朗(現東京サントリーサンゴリアス)らが活躍。決勝トーナメント進出をかけたスコットランド戦(19年10月13日)は2人がトライを挙げて28-21で勝った。
スピードを追求する日本に限っては、ラグビー場の芝は短くするのが主流になりつつあるのだという。
ただ、短くすることで耐久性が失われ、スクラムなどの際に芝がめくれたり、荒れたりすることはないのだろうか。
「芝は植物なので『葉の長さ=根の長さ』と考えられます。短くすることで管理は難しくなるのですが、そこがグラウンドキーパーとしての腕の見せどころです。どれだけ根を土の中に深く生やせるかが大事。現場で芝生と対話をしながら、何を欲しているかを感じて即効性のものと緩効性のものを使うなど肥料を変えています。根を張らすために土をほぐす作業と、サッチ(サッチング)という古い葉を除去する作業もすることで、発酵や虫の発生、病気を防ぎます。基礎をしっかりしないと建物が倒れるのと同じで、いい土を作って根を張らせています」
企業努力により、短くても耐久性のある芝を育てることで併用は可能になる。
FC大阪がJFLに所属した昨季は年間2試合だけだった花園第1グラウンドが、今季からはホーム開催時は毎試合となる。特に4月はリーグワンが佳境を迎えるため、FC大阪が3試合、花園近鉄ライナーズが2試合。毎週末に公式戦が組まれている。
「冬芝と呼ばれる寒地型芝はピークとなる生育期が3~4月で、毎日2~3ミリ伸びます。ラグビーなどで激しくすり切れても1週間である程度の回復が見込めるので、何とか耐えられるのではと考えています。オーバーシードの技術も発達しているので、昔のようにテレビ映えしない茶色の枯れた会場はなくなっていると思います」
公式戦が重なる3~4月は生育期というのも連戦に耐えられる理由の1つだ。
花園といえば昨年末の全国高校ラグビー大会から、ハトがグラウンドに集まるようになった。より展開の速いサッカーでは、ピッチにいる大群が試合に影響を及ぼす可能性も出てくる。ハト対策についても聞いた。
「一部で肥料を変えたことがハトが集まる原因との情報もありましたが、肥料を食べに集まるのはあり得ないですね。12月中旬から肥料はまかないですし、今も液体のものを使っています。おそらく(芝の)種を食べているようです。ハトの気持ちは分からないですが、ハトの世界の口コミで仲間の群れが集まるようになったのでは。いろいろ対策を練っている段階で、カラスの模型をつるしてみたり。ただ(模型のカラスが)攻撃してこないと分かると、戻ってくるんですね。最近は種の多い場所にシートで目隠しをするようになり、先日確認をするといなくなっていました。ただ、シートを敷くのをやめてしまうとまた来るので、サッカーが開幕するまでにはさらなる対策も考えないといけません」
花園の舞台裏。きれいな芝生で、選手が活躍するための努力が詰まっている。【取材、構成=益子浩一】


