【トゥールーズ(フランス)27日=松本航】ラグビーワールドカップ(W杯)フランス大会に臨んでいる日本代表(世界ランク13位)は28日(日本時間29日)、サモア(同12位)との1次リーグ第3戦を戦う。各組上位2チームの8強へ、1勝1敗同士の負けられない一戦。SO李承信(り・すんしん、22=神戸)はW杯初のメンバー入りを飾り、後半の重要な局面でのプレーが想定される。過去5勝12敗、7月の前哨戦でも22-24で敗れた難敵に、若き力で立ち向かう。

W杯に懸ける熱は、フランスで一段と増していた。試合会場での前日会見。李はマイクを握り「メンバー外は心の底から悔しかった。味わったことがない悔しさ。エキサイティングな気持ちで、自分の強みを出したい」と思いを隠さなかった。昨年に初の代表入りを果たし、W杯直前のイタリア戦でも先発。だが、過去2戦はベンチから外れた。

「2019年に日本でW杯があるんよ。代表になって、そこに出てほしい」

8歳だった09年、日本で初のW杯開催が決まった。3人の息子を愛した母の永福(よんぼく)さんに、そう言われたことがあった。自宅に戻ると、いつも泥だらけの練習着を楽しそうに洗ってくれた。「常に謙虚に、感謝の気持ちを持ちなさい」。そう教えられ、家では常に息子を優先してくれた。病が分かったのは、その頃だった。小学6年生になり、44歳の母は天国に旅立った。乳がんだった。

「年齢的に(19年は)厳しかったのですが、言葉は覚えています。お母さんにもW杯を見てほしかった」

母を失った実感はすぐにわかなかった。つらさは成長とともに増した。支えはラグビー。そして父や、2人の兄、親戚だった。イングランド戦からサモア戦にかけて、家族が応援で現地に滞在。休日に言葉を交わし、心は潤った。母に教わった通り、謙虚に、感謝の思いを持って準備した。22番のジャージーをつかみ「『支えてくれる人に活躍している姿を見せたい』という気持ちが、大会前よりも強くなった」とうなずく。

フィジカル自慢のサモアに対し、後半の運びが鍵を握る。首脳陣には「一番プレッシャーがかかる時間帯に、どう攻めるか。リードしてくれ」と伝えられ、自身の役割は明確だ。

「得点や状況を見て、試合をクローズ(終了)させる。自信を持ってプレーすることに集中しています」

22歳で立つW杯のピッチ。堂々と使命を全うする。