決勝トーナメント進出を逃したのは、我慢比べに勝てなかったから-。元日本代表コーチ沢木敬介氏(48=横浜キヤノンイーグルス監督)は、8日のアルゼンチン戦を振り返って言った。15年イングランド大会の南アフリカ撃破から続いた日本の急成長をたたえ、アルゼンチンとの差も「わずかだった」と評した。4年後の次回オーストラリア大会に向けて、若手のさらなる成長を期待した。

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日本は悪くなかった。やりたいことはできていたし、データから見てもアルゼンチンに大きく劣る点はなかった。ここまでできて結果が敗戦だったのだから、仕方がないともいえる。

あえて敗因をあげれば、後半の勝負どころで我慢比べに勝てなかったこと。後半16分、レメキのドロップゴールで2点差に迫った直後、相手はキックオフを中央に蹴ってきた。そこに身長192センチの相手NO8ゴンザレスら2人が走り込む形。リーチの背後、姫野の前方へのボールに両チーム2人が競り合い、姫野がノックオン。逆光の影響があったかもしれないが、自陣で相手ボールのスクラムとなった。日本が精神的に優位に立ち、アルゼンチンにはプレッシャーがかかっていたが、わずかなミスで流れを再び相手に手渡す形になった。さらに直後のスクラムでアドバンテージを与えてしまい、1回の攻撃でWTBボフェリのトライを許した。

ただ、1次リーグの4試合を振り返れば今ある力は出し切れていたと思う。チリに快勝し、イングランドにも食い下がった。サモアにしっかりと勝って、アルゼンチンにも勝つチャンスはあった。前回日本大会の決勝トーナメント進出は、ホームのアドバンテージが大きかった。今大会の結果が、今の日本の実力ともいえる。

もっとも、南アフリカを破った15年からの3大会の成績には胸を張っていい。11年までの7大会で1勝しかできなかった日本が、ここまで世界のトップと戦えるようになった。スーパーラグビーに参戦していたサンウルブズが20年に解散するなど過酷な状況の中で、ここまでよくやったと思う。

まだまだ日本ラグビーはこれからだ。スタメンで出ている経験のある選手と、経験のない交代選手にも差がある。15年大会から経験している選手の多くが、この大会が最後になるはず。経験を積んだ選手が抜けた後、次の4年が重要になる。

今大会で活躍したSH斎藤やロックのディアンズらには、これからの日本代表の中心になるとともに、自らの経験を次の世代に伝えていってほしい。

これからさらに上を目指すためには、チームとしても、個人としても、より過酷な環境を経験していくことが重要。代表チームであれば、アウェーで強豪国との対戦を経験すること。個人でもリーグワンで経験を積むことはもちろんだが、海外にプレーの場を求めることも必要かもしれない。

過酷な環境に身を置くことによって、選手は成長できる。次は27年のオーストラリア大会。今の日本のレベルを維持し、さらに高めていくためには、選手の頑張りも必要になる。(横浜キヤノンイーグルス監督)

 

◆沢木敬介(さわき・けいすけ)1975年(昭50)4月12日、秋田・男鹿市生まれ。秋田経法大付(現ノースアジア大明桜)高、日大を経て98年にサントリー(現東京SG)入り。SO、CTBとして活躍。日本代表7キャップ。06年から6年間サントリーでコーチを務め、13年にU20日本代表監督就任。15年W杯では日本代表コーチングコーディネーター(CC)として南アフリカ戦勝利に貢献。16年にサントリー監督に就任し、16、17年トップリーグ連覇。20年はスーパーラグビー「サンウルブズ」でCCを務め、20年から横浜監督。昨季はチーム過去最高3位。

【ラグビー】8強かけるアルゼンチン戦は我慢比べ、得意の速い展開に持ち込めば勝機 沢木敬介氏