【トゥールーズ(フランス)=松本航】

日本(世界ランク13位)が2大会連続の8強に王手をかけた。過去5勝12敗、7月の前哨戦でも敗れたサモア(同12位)に28-22で勝利。試合当日に副将で先発予定だったSH流大(31=東京SG)が右ふくらはぎの負傷で欠場となったが、NO8姫野和樹主将(29=トヨタ)を中心に一丸で乗り越えた。

D組2位での1次リーグ通過へ、10月8日にはアルゼンチン(同9位)との最終戦(ナント)。勝利し、自力で次のステージに進む。

   ◇   ◇   ◇  

日本がまた強くなった瞬間だった。

6点差に迫られた後半41分、途中出場のSO李が盛況の客席へボールを蹴り出した。男たちは抱き合い、急きょ先発のSH斎藤がベンチ前で何度も右拳を振った。姫野は試合前に伝えた。

「みんなでデスゾーンまで来た。1人じゃない。絆がある。恐れなくていい」

W杯を世界最高峰エベレスト登山に例え、生きるか死ぬかのデスゾーン(8000メートル超)で過ごす。失敗はできなかった。

不測の事態に動じなかった。

2日前のメンバー発表で先発だったSH流が不在。26歳の斎藤が先発、代表0キャップの福田が控えに入った。前半13分、タックルを受けながら突進したフランカーのラブスカフニが左手1本で先制トライ。7点リードの32分には大きく左へ展開し、フランカーのリーチが飛び込んだ。後半9分には姫野が続き、全員主将経験者のFW第3列がトライ。速く、連動するラグビーは副将が不在でも機能し、姫野は胸を張った。

「流のケガは、とても大事な選手で残念。ただ、悲観的になりたくなかった」

簡単ではなかった。

後半7分に相手レッドカードで数的優位に立ちながら、試合終了間際のリードは6点。選手は「サムライタイム!」と発した。12-34で敗れた前戦のイングランド戦も後半15分まで1点差だった。苦しい時間に役割を思い出し、勇気を振り絞る合言葉を「侍」と重ねた。

毎試合チーム内MVPを「ソード賞」とし、レプリカの日本刀が贈られる。W杯前には刀の素材を使ったブレスレットを作り、ジョセフ・ヘッドコーチから全選手、スタッフに手渡された。初戦のチリ戦では会場へ向かうバスに乗る直前、選手は首脳陣からの手紙を受け取った。誰かが欠けても崩れない絆を、登録33人とスタッフで育んできた。

運命のアルゼンチン戦まで中9日。ジョセフ・ヘッドコーチは「勝つことができて次につながる。ワクワクしている」とほほえんだ。W杯最高3位の強豪に対し、実績では劣る。

それでも4年間で日本は「Our Team(アワチーム=私たちのチーム)」を作ってきた。8年前には南アフリカ、4年前にアイルランド、スコットランドと格上を倒した。勝利での自力突破へ、恐れることはない。姫野は言い切った。

「アルゼンチン戦へ、そこまで大きく変える必要はない。自分の役割を理解し、同じ絵を見て、一貫性を持ってやっていく」

デスゾーンを登り切る自信と絆が、日本にはある。