【阪神週間⑤真弓明信】「全部本塁打するつもりでいけ」…自分に重ねて言えた極意/代打の神様列伝vol.3

ウィークデー通しの阪神特集。最終日は真弓明信氏の登場です。味わった者にしか分からない、阪神ならではの「代打の切り札」像とは―。(2015年3月12日掲載。年齢、所属などは当時。敬称略)

傑作選

高原寿夫

代打で左越え二塁打を放つ真弓。打球を見やる目の力。この年、30打点と荒稼ぎした=1994年8月

代打で左越え二塁打を放つ真弓。打球を見やる目の力。この年、30打点と荒稼ぎした=1994年8月

▷中心打者から徐々に

川藤幸三(阪神OB会長)が言うように「代打の神様」は基本的に元々が中心打者だ。

クラウンから移籍後、俊足と強打で鳴らし、85年日本一時には脅威の1番打者として活躍した真弓明信(日刊スポーツ評論家)もそうだった。90年代に入るとスタメンが減り、徐々に代打の切り札になっていった。

◆真弓明信(まゆみ・あきのぶ)1953年(昭28)7月12日、福岡県生まれ。柳川商(現柳川)-電電九州を経て72年ドラフト3位で太平洋に入団。78年、田淵幸一らとの大型トレードで阪神へ移籍。83年に3割5分3厘で首位打者。2051試合、1888安打、292本塁打、886打点、打率2割8分5厘。現役時は174センチ、75キロ。右投げ右打ち。09~11年阪神監督。

真弓 出場機会が減っていくのは寂しいものだ。でも40歳が近かったし、年齢的にも体力的にも仕方ないと思えた。早い時期に言われていたら、どうだったか分からなかったけどね。

▷妥協したら落ちる

よく聞くことだが、レギュラーを張った人間なら、誰でもそこを外れた場合、引退するか、あるいは代打などで現役を続けるか決心する時期が来る。

真弓 自分はボロボロになるまでやると決めた。でも代打要員になっても自分でそれ専門とは思っていなかった。決めてしまうと、どうしても練習などが減って体力的に落ちてしまう。だから何かあればいつでもスタメンで行く、という意識でやっていた。「代打の切り札」という意識は自分ではなかった。

スター選手から代打の切り札、そして現役引退。

その後、真弓は監督として3年間、阪神の指揮を執っている。打者への指導の中で代打経験が生きた。

▷新井貴浩へ

あまり知られていないことだが、真弓は当時の主砲新井貴浩(現広島)によく「全部本塁打するつもりでいけ」とアドバイスしていた。

真弓 最初から本塁打を狙えば、長打できるコース以外の球には手を出さない。本塁打の打ちそこないがヒットになるという感覚を大事にしていた。自分が代打になってから本塁打を強く意識した。レギュラー時代はどちらかといえば中距離打者。でも安打しかない代打はこわくない。状況に応じた打撃は必要だが、常に本塁打の圧力はかけられるように心掛けた。

桧山進次郎(日刊スポーツ評論家)の引退後、阪神にはこれといった存在は出てきていない。

新たな「代打の神様」の出現には時間がかかるのだろうか。

真弓 「代打の切り札」はチームにとって重要だ。どの球団でもそれなりの存在はいるんだけど、阪神が目立つのはメディアのせいもあるね。今季は例えば、今成とか新井良太とか、レギュラーでもおかしくない選手がスタメンから外れるケースが増える可能性がある。彼らが「代打の切り札」になって、またレギュラーを狙うという新しい形ができるんじゃないかと思っている。