PL学園元監督の中村順司氏「球道即人道」宮本慎也氏も驚いた柔軟指導

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番記者裏話

松尾幸之介

「球道即人道」。その言葉通りのエピソードが詰まっていた。お笑いコンビ、トータルテンボスの藤田憲右(46)と、桑田真澄、清原和博のKKコンビら多くの名選手を指導したPL学園元監督の中村順司氏(75)の対談を取材した。吉本興業スポーツ事業部が運営するYouTubeチャンネル「虎ノ語」の企画の一環で、昨今の野球界や指導法などについて熱血トーク。野球ファンのみならず、全ての人に通じる要素が凝縮されていた。

藤田憲右に中村順司氏が贈った色紙

藤田憲右に中村順司氏が贈った色紙

中村氏の話で印象的だったのは伝え方のうまさ。インタビュアー役の藤田と打撃や投球について盛り上がると、立ち上がって身ぶり手ぶりで動作を指南。「どう説明すればわかりやすいか」を常に考え、選手に伝えてきたという。自身も元選手。80年に30代でPLの監督に就任した当初は、よくグラウンドで実演して選手に動きを教え込んでいたという。

考え方の根底にあるのは「けがをしない、故障をしないこと」。知識のもとになったのは、監督就任直前の社会人時代に建築機械の製造・販売を行うキャタピラージャパンでプレーした経験から。「機械のエンジンとかの動きは縦方向から回転して、ギアでタイヤにつながっていたり。人間の体も回転運動から直線的な動き。足でステップして腰が回って腕とバットにつながってボールをとらえる。同じだよね。そういうことでやれば選手が理解しやすいかなと思ってね。そうすると、何でひじが痛くなったのかなとか分かるじゃないですか。それを理解することで、その人がまた人に伝えられると思いました」。

黄金期を築いた80年代の選手らにも、当然その理論で教えた。基本に忠実だが、応用にも柔軟に対応。内野ゴロの守備では捕って投げるまでのスピードが早くなるならば逆シングルでの捕球もすすめた。ヤクルトなどで活躍した守備の名手、宮本慎也氏が入部した際のエピソードも明かし「宮本が驚いていてね。『今まで逆シングルで捕れって言われたことがなかった』って。常にボールが体の真っ正面にくるように回り込んで捕るというのが基本の教え方だったから」と振り返った。

厳しさの中にも愛ある指導を心がけた。それが甲子園優勝6回、準優勝2回、監督通算58勝という戦績へとつながっている。インタビューを終えた藤田も「うれしかったですね。百戦錬磨の監督さんだからどんな感じかなと思ったら、ものすごく温かい監督なんだなと。僕も現役時代、この監督に教わりたかったなと思いましたね」と語った。

捕球動作について熱弁する中村順司氏(左)とインタビュアーのトータルテンボスの藤田憲右

捕球動作について熱弁する中村順司氏(左)とインタビュアーのトータルテンボスの藤田憲右

中村氏には「球道即人道」ともうひとつ、PL学園の卒業生に贈っている言葉がある。それは「人生の財は友なり」。取材時は5月中旬で、同24日にプロ野球交流戦の中日-西武戦で務めることになった始球式に呼ばれたことをとても喜んでいた。自身初の始球式。球場では中日立浪和義監督、福留孝介外野手、西武松井稼頭央ヘッドコーチ、平石洋介打撃コーチら多くの教え子たちが迎えた。「指導者になってよかったなと思いました」。希代の名将が、この日一番の穏やかな表情をみせた。

中村氏と藤田の対談の模様は、3日から4回に渡ってYouTubeチャンネル「虎ノ語」で公開される。