【フィギュア新年直前企画】得点分析で見える世界トップ選手の技術/男子データ編
フィギュアスケートは7月1日より新シーズンを迎えます。どんな滑り、戦いが繰り広げられるのか。その直前に、昨シーズンの男女シングルの演技要素(ジャンプ、スピン、ステップ)の得点を一覧にしました。技術と芸術が融合したフィギュアスケートですが、今回は技術にフォーカス。新シーズンに向けての「復習」の意味も込めて。男子編です。
※記録はISU(国際スケート連盟)公認大会より
フィギュア
阿部健吾
<昨シーズンを数字でおさらい>
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■エレメンツ■
ベスト3にはいずれも北京五輪でのネーサン・チェン(米国)が並びました。団体戦が採用された14年ソチ五輪から、スケーターの演技機会も増えており、大一番にピーキングを持ってきた選手らの渾身(こんしん)の滑りも、ジャッジに響く部分がありそうです。
1位(21・21点)のチェンのショートプログラム(SP)は個人戦の後半に入ったタイミングでの連続技。体力が消耗する後半に4回転ルッツ-3回転トーループの高難度技を決めています。2位(20・72点)には、その4日前の団体戦での同ジャンプがランクイン。個人戦でさらに上積みした形になりました。
北京五輪からは10位(18・85点)に羽生結弦、鍵山優真の2選手も高得点を出しています。後半の4回転トーループ-1オイラー-3回転サルコーで構成も同じでした。
■出来映え点■ジャンプ
北京五輪の個人戦、チェンの4回転ルッツが4・93点を稼ぎ、1位となりました。
金メダルを手にすることになったフリー「ロケットマン」の中盤、曲がさびに入るタイミングを知らせるように跳ぶ1本です。
ジャンプのGOE評価の基準は6項目あります(※1)が、5項目以上を満たしたと判断した際にジャッジに推奨する「+5」を3人が付けています。4項目を満たす「+4」は6人。ジャンプは難しい入り方はしていませんが、高さ、着氷などの無駄のなさが際立ちました。
3本同じジャンプでランクインしたのは鍵山優真。絶対的な自信を持つ4回転サルコーは五輪、世界選手権でも高評価を引き出しています。
10位に入った金博洋の4回転ルッツも光ります。多種類の4回転を跳ぶ先駆け的存在のスケーターは、母国での五輪で、ここぞの1本を披露しました。
(※1)基準の6項目
<1>高さおよび距離が非常によい。(ジャンプ・コンボおよびシークェンスでは全ジャンプ)
<2>踏切および着氷がよい
<3>開始から終了まで無駄な力がまったくない。(ジャンプ・コンボではリズムを含む)
<4>ジャンプの前にステップ、予想外または創造的な入り方。
<5>踏切から着氷までの身体の姿勢が非常によい。
<6>要素が音楽に合っている。
■出来映え点■スピン
1位の1・60点を記録したのはジェイソン・ブラウン(米国)。10位までに7回も登場します。
その頂点だったのが北京五輪・個人戦のフリーの最後のスピンでした。映画「シンドラーのリスト」の世界観を4回転ジャンプなしの独自色濃い演技構成で見せていった最後、それまで11個のエレメンツでGOEのプラス評価を積み重ね、物語を完結させる美しいスピンでした。ジャッジは9人中8人が最高の「+5」をつけています。基準の6項目(※2)中5項目以上を満たした際に推奨される評価が並びました。
(※2)基準の6項目
<1>スピン中の回転速度および/または回転速度の増加が十分。
<2>よくコントロールされた,明確な姿勢。(フライング・スピンの場合には高さ、空中/着氷姿勢を含む)
<3>開始から終了まで無駄な力がまったくない。
<4>回転軸が維持されている。
<5>創造的および/またはオリジナリティーがある。
<6>要素が音楽に合っている。
■出来映え点■ステップシークエンス
同得点(1・95点)で首位を分けあったのはチェンとブラウンでした。演技機会も同じ北京五輪のSP。ジャッジ9人中8人が「+5」と付けました。
基準の6項目(※3)に照らすと、エッジの深さ、独創性、音楽との符号などが対象になったと考えられます。
同得点(1・84点)の3位には、同じくステファン・ランビエル氏に指示を仰ぐ宇野昌磨、デニス・バシリエフス(ラトビア)が入りました。
10位までに登場するのはチェン、ブラウン、宇野、バシリエフス、羽生の5選手です。ジャンプ以外のスケーティング技術でも常にトップ争いをしていることがうかがえます。
(※3)基準の6項目
<1>エッジが深く,明確なステップおよびターン
<2>要素が音楽に合っている。
<3>エネルギー、流れ、出来栄えが十分で、開始から終了まで無駄な力がまったくない。
<4>創造的および/またはオリジナリティーがある
<5>全身の優れた関わりとコントロール。
<6>シークェンス中の加減速が十分。
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