北京五輪女子カーリングで日本代表ロコ・ソラーレが20日午前10時5分からメダルを懸け、決勝で英国と対戦する。

注目の大一番を前に、日本女子の「トップ4」の1つ、富士急のスキップ小穴桃里選手(26)に聞いた「カーリングあるある」を紹介します。【取材=阿部健吾】

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◆石はスコットランド産です

五輪で使う約20キロの石はスコットランドの無人島、アルサクレイグ島で採掘された「コモングリーン」という名前の花こう岩がボディーに使われています。競技発祥の国で、硬さなどが適してます。氷が接する面は「ブルートレーバー」という石で、2種類を合体させています。実は石を製作できる会社はスコットランドとカナダに2社しかありません。

「レッドホーン」などの名前の石も使われますが、材質には規定はないんです。直径、重さの範囲は決まってますが。ただ、庭石を作る方に聞いたら、日本の石は密度が詰まりすぎてて硬すぎると。いまは国際大会で使用できる石はその2社なので、独自に作っても試合では使えないし、滑り方も全然違う。なので独占です。石は1個が約10万円。試合には1チーム8個が2セット必要なので160万円。マイストーン? ほしいなあとは思いますが、持てないですよね…。

◆「バータイム」もあるんです

4年前の平昌大会では「もぐもぐタイム」が話題になりましたが、実は「バータイム」もあるんです。主に競技が盛んなカナダですが、勝った方が試合後にお酒をごちそうするんですよ。試合中に同じポジションの選手に「何が飲みたい?」って。海外では試合会場にバーがついてます。私はオレンジジュースが多いです、あまり飲めないので。酒豪の人は多いですよ。もともと試合前のロッカー室もチーム別でなく男女別、試合が終わればノーサイドな感じです。日本でも田舎に会場が多いので、町の飲食店で他チームと同席して合流したりしますね。

◆専用靴の利き足は滑りません

試合を見てると、選手たちが靴でリンクをすいすい進みますよね。専用の靴なんですが、あれ、利き足は滑らないようにしています。滑る必要がないときは、利き足と逆の足に「アンチスライダー」という滑らない素材のカバーを履いてます。たまに外したり付けたりしてるのがテレビでも映りますよね。専用靴で凍った道路を進むのも楽そうですが、凹凸が少しでもあると難しいですかねぇ。

◆ブラシ違反は2年間の出場停止です

ブラシは専用ですね。ハンドルの形状が曲がってなければ長さなどは自由。素材は今はほとんどカーボンですが、昔は竹ぼうきのような物で掃いてました。先端のブラシは厳しい決まりがあります。今は皆が同じ黄色い色のブラシを使ってます。それ以外を使うと、なんと2年間の出場停止です。

数年前「スイープ革命」がありました。それまで掃いて可能なのは、真っすぐにさせるのと遠くまで引っ張れるだけとされていたんです。それがあるブラシだと、石を曲げることと止めることができるようになった。最初は、それに気が付いている人は少なかったんです。氷に傷をつけて、その向きに石が曲がっていく。

その究極品が16年頃に出た赤いブラシです。あまりにもスイープでコントロールできすぎて、「これではカーリングではない」と、1年足らずで禁止に。ただ、いまの黄色い素材でも、ちょっとは効果あるので、みな試行錯誤してますね。

◆ストップウオッチで石の速さを測ります

今は腰にぶら下げている選手が多いですが、昔はブラシにつける人もいました。長さ44・5メートルのカーリングシートに設けられた「ホグライン」という2本の線の間などの通過時間を計って、石の速さを測ってますね。自動でなく手動で、市販品を使っていますが、チームでそろえます。計る時にメーカーが違うと細かさが違う。それでできるだけ誤差が出ないように。皆で合わせたときに、1人だけコンマ1秒ずれて「今日、ずっと調子悪い」なんてこともあります。

1つ特殊技能があります。深視力(物体の遠近感、立体感、奥行き、動的な遠近感を捉える目の能力)です。スキップに特有ですが、ハウス付近に常にいて、投げられた石は向かってくるので、奥から手前に向かってくる物体を測る視力が発達したようです。これは運転免許取得に必要で、検査の時に「(バイクの)中型免許が取れます」と言われました(笑い)。