五輪のリンクで氷がえぐられた穴にはかつて、浅田真央もはまっていた。
2010年バンクーバー大会。女子ショートプログラム(SP)2位から逆転を目指して挑んだフリー。その終盤だった。
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3連続ジャンプを終えて、続く3回転トーループに踏み切ろうとした瞬間、左足のエッジが氷に引っかかった。崩れるバランス。懸命に立て直して何とか跳ぼうとしたが、助走の勢いを失ったジャンプは1回転になった。わずか0・44点しかもらえなかった。
「跳ぶ前にガクッときてしまった。疲れかもしれない」
演技直後はそう振り返ったが、リンクの溝にエッジが引っかかったようだった。
この大会ではSPでトリプルアクセル(3回転半)に成功。フリーでも冒頭に単独のトリプルアクセルを、さらにトリプルアクセルからの連続ジャンプを降り立ち、五輪女子史上初めて1大会で3度のトリプルアクセルを跳んだ。後日、ギネスにも認定された。
それでも、悔やみきれない不運もあって、SP1位の金妍児(韓国)に追いつけずに銀メダルだった。「悔しいです」と漏らして何度も涙をぬぐった。マスカラで黒くにじんだ涙が流れ落ちる姿が印象的だった。