15歳の心は壊れていた。ドーピング違反騒動に揺れたROCのカミラ・ワリエワ(15)が、SP首位からミスが連鎖して4位に沈んだ。フリー141・93点の合計224・09点。自身の世界記録から48・62点も低い衝撃の失速で、確実視された金メダルどころか表彰台すら逃した。シニア1年目で今季5戦全勝。無敵の少女がジャンプ7回のうち5回で転び、手をつき、バランスを崩して号泣した。

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とても平常でいられなかった。世界中から疑惑の目を向けられた中、こわばった表情で氷に立つ。2種3本の4回転ジャンプ全て失敗。ほぼ無縁だった転倒がここで相次いだ。取材エリアで顔は沈痛を極めた。無言のまま五輪から去った。SP、フリー、合計の世界最高点を独占する女王にはない筋書きの悲劇だった。

長い手足、バレエで磨いた表現力、卓越したスケート技術に高難度ジャンプ。試合に出るたびに記録を更新し、大会序盤の団体戦では女子で五輪史上初となる4回転を決めた。この日からは信じられないノーミスで金メダルを引き寄せた。ところが栄光の序章から一転、禁止薬物の検出が明るみに出る。団体、個人の2冠が絶対と目された新星は渦の中へ。未成年を理由に出場を認められたものの、IOCが彼女の金メダルを“覚悟”して記録を暫定扱いとして抵抗していた。少なくとも競技会の上では誰からも勝利を疑われなかった少女が、見せたことのない乱調で氷の上に倒れた。

五輪史に残る敗戦。団体戦を終え「お母さんに3歳のころから五輪で優勝したいと言ってきたんです」と見せた幼すぎる笑顔は、霧の中へ消えた。【木下淳】