ドーピング疑惑に揺れ、金メダルが確実視されたフィギュアスケート女子で4位に沈んだROC(ロシア・オリンピック委員会)のカミラ・ワリエワ(15)を巡る騒動が、一夜明けた18日も収まらない。前夜のフリーでは自身の世界記録から48・62点も低い合計224・09点に終わった。心が壊れた演技直後。「鉄の女」ことエテリ・トゥトベリゼ・コーチから発せられた言葉が話題になっている。

動揺し、既に泣きそうなワリエワを出迎えたトゥトベリゼ氏の第一声は、AFP通信によると「なぜ諦めたの? なぜ戦いをやめたの? 説明しなさい」だったという。得点発表の場で泣き崩れた瞬間こそワリエワの肩に手を回したが、ねぎらいの言葉がなかったことに、まるで選手を使い捨ての駒のように扱った言動に、そして違反について全てを知らないはずがない同コーチに批判が集まった。

国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長はこの日、今大会初の会見で騒動に言及。テレビ観戦して感じた思いとして「彼女を拒絶しているよう見えた。本当に不思議だ。自分たちの選手に、こんなにも冷たい態度を取れるのか」と苦言を呈した。

「甚大な重圧がかかっていた」とワリエワを気遣い「15歳の少女だ」と心配した。そして問題解決へ踏み込む。五輪に出場する選手の年齢制限。その引き上げをIOC理事会で本格的に協議する考えを表明した。

世界反ドーピング機関(WADA)の規定では16歳未満の選手は未成年として保護される。それが今回の出場、ワリエワが逃げられない状況につながった、との見方もある。その中で「最低年齢を設けることが適切かイニシアチブを取っていきたい」と主導を探る。

「ドーピングは、ほとんどのケースでアントラージュ(選手のために尽力する関係者)が関わっている。彼女に(薬物を)投与した人物が有罪だ」とも強調。五輪史に残る「ワリエワ騒動」を機に、コーチら周辺に疑いの目を向け、選手には不正告発を呼びかけた。

国際スケート連盟(ISU)も動かざるを得なくなったようだ。AFP通信によると、年齢制限を現行の15歳から17歳に引き上げる投票を6月の総会で行う予定だと認めた。【木下淳】