「ユヅ」の愛称で親しまれている男子フィギュアスケート羽生結弦(27=ANA)へ、日本最北限で自生する「雨乞(あまご)の柚子」の生産者も完全燃焼を願った。

宮城県柴田町で加藤農園を営む加藤壽彦さん(67)は9日、「雨乞の柚子は、皮が厚い、香りがいい、味がいい、色がきれい。4つそろっていることが特徴」と説明。「フィギュアのことを詳しくは分からないですが、結弦さんも演技力とか芸術性とか力強さとか、すべてが備わっているんですよね。そういう意味では『YUZU』の響きだけじゃなく似ているのかもしれない。すべてがそろった素晴らしい演技をしていただければうれしいです」。10日に行われるフリーでの名演を期待した。

「雨乞の柚子」は数々の試練を乗り越えて強く生き抜いてきた。約600年前に種がまかれたとされる古木が、厳しい風雪などにも耐えて立派な実を付け続けている。約40年前からは接ぎ木などで植樹も進め、今では約400本に。「肥料をまいたり、木が高くなりすぎたら枝を切ったりはしますが、その程度。強いんです」。ユズ畑の前には推定樹齢600年超と伝えられている樹高35メートル、幹囲12メートルの巨木「雨乞のイチョウ」もそびえ立つ。1968年(昭43)に国の天然記念物に指定。人々が雨乞いの祈りをささげた場所でもあり、イチョウの根元付近の湧き水は1度も枯れたことがない。

秋にはユズの果実とイチョウの葉で、雨乞地区は黄金色に染まる。「最近は結弦さんのファンだと言う方も来ました。『同じYUZUだね』なんて親しんでくれる人もいた」と加藤さん。コロナ禍の影響もあって、ここ数年は生まれ育った仙台のリンクで練習を積んできた羽生。同じ宮城に根付く強い生命力同様、心身を枯らすことなく4回転半を結実出来ますように…。【鎌田直秀】