これが「スーパースター」という存在なのか。

9日に行われたスノーボード男子ハーフパイプ予選に登場したショーン・ホワイト(35=米国)の振る舞いに目を見張った。

五輪3度の王者は、今大会を最後に現役引退を表明している。最後の雄姿に誰もが注目する中で、1回目は転倒。プレッシャーのかかる2回目、これでミスすれば決勝に進むことなく戦いを終えることになる場面。そこでダブルマックツイストなどの大技を決めきって4位で決勝に進んだ。

ここ一番での勝負度胸の良さが際立ったが、そのすごみを見たのは演技後だった。

「今大会の目標は楽しみ、興奮と喜びのすべてを得ること。自分らしいランを決めることができれば満足できる」。そう直前会見では語っていた通り、得点を確認すると思い切り喜んだ。そしてその弾むような勢いのまま取材エリアに移動してたが、そのハイテンションはそこから1時間以上ずっと変わらなかった。

各国のメディアが詰め掛け、列をなしていた。1つ1つのインタビューに応じる姿を追うと、何度でも同じように、感情豊かに応答しているのが分かった。

「今日の出来はどうでしたか?」。必ず聞かれるような質問に、額を拭うしぐさをしながら「危なかったね! 少しナーバスになっていたかな。でも楽しかったよ!」と笑顔で答える。何度も何度も、しっかり誠実に同じテンションで答え続けていた。

気温は氷点下10度。各局の時間制限は決まっているが、追加で質問が来ても必ず応じていた。最終的には1時間以上もかけて、テレビの次に待つペン記者の取材までを終えた。当然、もう他の選手は誰もいない中で、努めて明るく振る舞うホワイトが残っていた。ついに取材が終わると「here we go!」と叫んだ。その姿に報道陣も笑顔になった。

今大会は主要競技を持たない遊軍として現地入りしており、ホワイトを生で見たのは初めてだった。いつも、同じように振る舞っているかは分からない。ただ、この日1度だけでも、その器の大きさを感じさせる場面に出くわしただけで、ひきつけられた。

決勝は11日。本当のラストランを見るのが待ち遠しくなった。【阿部健吾】