北京五輪フリースタイルスキー・モーグルの日本代表は、男子エースの堀島行真(24=トヨタ自動車)と女子エースの川村あんり(17=東京・日体大桜華高)をはじめ、有力選手がずらりそろう。複数のメダル獲得の可能性も期待される中で、前回平昌五輪まで3大会連続で五輪に出場した西伸幸さん(36)に、元チームメートだからこそ知るエピソードや、伸び盛りの若手選手たちの特徴を聞いた。【取材・構成=奥岡幹浩】
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◆堀島行真
国内で台頭してきた中学生の頃からエア(空中技)のポテンシャルは高かった。いまでもエアの技術は高いものを持っていますが、平昌五輪後に特に力を入れて磨いてきたのがターン技術です。ターン点は採点の6割を占める最重要ポイント。フィジカルをより鍛え上げ、さらには4年間かけて歩き方や階段の登り方などから見直し、昨年からパルクールなどバランス感覚を養う独自のトレーニングを取り入れたことが、ターンの安定性につながったと思います。
ターンがうまい選手の場合、エアは不得手というケースがよく見られます。そういう選手は、第2エアに入る前に進入速度を抑えることが多い。でも行真は、進入時のスピードをまったく落とさずにエアに入れる技術を持っている。それはエアのセンスがもともと突出しているから。スピードも含め、いまの行真はすべての面で秀でています。今季W杯では9戦3勝、全試合で表彰台に立っており、五輪でも大きな期待がかかります。カナダのキングズベリーが最大のライバルですが、お互いに100%の力を出し切ったら、行真が上位に来ると思っています。
性格はすごく真面目で優しい。誕生日を覚えてくれていてメッセージをくれたり。また僕が引退するときには、すごくきれいな手書きの字で手紙をくれました。いまでも宝物です。
◆原大智
競輪選手になること自体がすごく大変なことなのに、モーグルに帰ってきたらすぐにW杯で表彰台に立った。とんでもないことをやっているというのが率直な感想です。
大智はフィジカルがものすごく強くて、めちゃくちゃマッチョ。スクワットを上げたりするのも日本チームで断然トップでした。
平昌五輪での銅メダルは、大智なら取ってもおかしくない気がしていた。滑り自体は調子良さそうだったし、彼は“持っている”タイプの選手だと思っていたから。
性格はいい意味ですごくマイペース。物事に動じない神経の太さを持っています。
◆杉本幸祐
雪のない地方の出身だけどモーグルがしたくて長野に移ったという経歴が僕と似ていて、個人的にすごく応援しています。今季はW杯で初めて表彰台に上るなど、一皮むけた感があります。もともと潜在能力や技術力は高い選手でしたが、これまで本番では抑えて滑ることが多かった。今季は最初から最後までアタックしつづける姿勢が、好成績につながっていると思います。
性格は朗らかで、彼がいると周囲が明るくなる。後輩たちにも気兼ねなく接するタイプ。好きな音楽は、僕と同じくレゲエです。
◆松田颯
滑りの特徴としては、エアが得意というのがまず挙げられます。コーク1080(3回転)にグラブ(板をつかむ動作)を入れるという難易度の高い技を大会で披露したこともあります。縁あって、実は幼稚園のころから存在を知っているけれど、昔から明るい子でした。京都出身で、関西特有の明るさがあるというか。メンタルは強く、勝負をかける必要がある時には腹をくくって勝負できる度胸を持っています。
◆川村あんり
W杯今季3勝と飛躍を遂げています。強さの要因の1つがエア。小学校時代の滑りを見たことがあるのですが、小さい子がすごい技を繰り出していて、そのギャップに驚いた記憶があります。
そして現在、海外勢と互角以上の成績を残せているもう1つの要因はスピード。こぶの大きな海外のコースだと、彼女のような小柄な選手はこぶの深いところにはまってしまい、スピードに乗せるのが難しくなる。でも川村選手は、こぶとこぶの合間にある深みにはまらず、こぶの高いところから高いところへと効率的に移動しています。この滑りができる女子選手はなかなかいません。
いつも元気にあいさつしてくれて、明るい雰囲気の持ち主。そして練習熱心で、みぞれが降るような悪条件の春先のゲレンデにやってきて、黙々と練習を重ねていた姿が印象的です。
◆冨高日向子
安定感が高く、自分の100%に近い滑りを常に繰り出せるタイプの選手。技術的に大きなミスをすることが少ないから、成績面での波が小さい。3つの採点要素となるターン、エア、スピードと、すべてにおいてバランスが取れています。五輪のような大きな舞台でも、普段通りのパフォーマンスを出してくれると期待しています。
◆住吉輝紗良
最大の特徴はスピード。カービングターンといって、男子選手にように、板を直線的に滑らせる力強いターンを繰り出します。これを習得している選手は女子ではなかなかいません。日本女子選手としては体のサイズが大きく、滑りも非常に見栄えがします。採点競技のモーグルにおいて、この点も彼女のストロングポイントといえるでしょう。
◆星野純子
日本女子選手では唯一となる2度目の出場。五輪のような大舞台では、彼女の持つ豊富な経験が大きな強みとなります。滑りの特徴としては、ジャンプが大きく、その完成度が非常に高い選手。10年ほど前、まだ女子では繰り出せる選手が少なかったコーススクリューという技を、当時から成功させていました。明るい性格で、頭脳も明晰(めいせき)。気遣いができて、人との接し方がすごく上手なタイプです。
●モーグル 冬季五輪では88年カルガリー大会で公開競技、92年アルベールビル大会から正式競技となった。選手2人が隣り合って同時に滑走し、1対1で争うデュアルモーグルもあるが、五輪では「モーグル」のみ採用。日本勢の表彰台は2人(のべ3度)で、女子の里谷多英が98年長野大会で金メダルに輝き、02年ソルトレークシティー大会で銅メダルを獲得。男子の原大智が18年平昌大会で銅メダルをつかんだ。
◆西伸幸(にし・のぶゆき)1985年(昭60)7月13日、川崎市生まれ。父の影響で幼少期からスキーを始める。中学卒業後に1人で長野に移り、白馬高へ。09年世界選手権モーグル4位、デュアルモーグル2位。五輪には10年バンクーバー、14年ソチ、18年平昌と3大会連続出場。18年全日本選手権を最後に現役引退し、現在は新潟県の神立フュージョンバンプスクール副校長として指導にあたる。趣味は音楽で、歌唱力はプロ級。





