<1996年アトランタ大会男子サッカー主将 前園真聖(41)>

 サッカーは選手村に入るわけでもないし、開会式にも出ませんからね。五輪といっても、他の競技とは少し違います。僕らの試合もマイアミとオーランド。アトランタには行けず、大会の雰囲気は味わえなかった。子どものころも、五輪は考えなかったですね。陸上や柔道は見ても、サッカーは日本が出ていないから。

 でも、僕らは真剣でしたね。Jリーグができて3年目、プロ意識も高く、世界への扉を開いてやろうと強く思っていた。23歳以下では一番の大会。28年ぶりの出場で、周囲の期待も感じました。ブラジル戦も、勝ちたいとは思っていましたよ。でも、レベルの差は歴然でした。「俺たちのサッカーをやろう」なんて、できるわけがない。怖いもの知らずだったし、若かったんですね。勝っても、素直に喜べなかった。実力差を見せつけられ、この人たちと一緒にやらないと、海外に行くしかないと。ただ、内容はどうあれ、勝ったのは大きい。あれがないと、今の自分はないですから。

 僕は98年W杯の1次予選でメンバーから外れましたけど、能活(川口)やヒデ(中田)ら五輪のメンバーの多くがW杯にも出た。その後は、五輪もW杯も出続けている。あの五輪が世界に出るきっかけになったなら、うれしいですね。

 事件(タクシー運転手暴行容疑)当時(13年10月)を考えると、こうしてお仕事をいただいているのは、うそみたいです。マイナスからだったから、自分を素直に出そうと。もともとスイーツが大好きで、半身浴もやり、アロマもたく。これまでは、どちらかというとワイルドなイメージで見られていたけれど、今は楽しく、素でやっています。バラエティーなどで休みもないけれど、土、日曜は子どもたちにサッカーを教えています。サッカーは、ずっと続けていきたいですね。

 東京五輪、楽しみです。サッカーだけでなく他の競技も見たい。いろいろなスポーツを取材すると、サッカーが恵まれているのが分かる。マイナーで、環境が整っていない中、選手たちは頑張っている。それを知ることも大切です。まだまだ知らない競技、見たことない競技もありますから。

 5年後に向けて、サッカー界も頑張らないと。今、U―17やU―20がアジア予選を突破できなくなっている。問題だと思うんです。僕らもU―20W杯に出た選手たちの力が、五輪に出るために大きかった。育成年代の強化をしっかりしないと。東京五輪に向けて、大切なのはそこですよ。

(2015年06月03日東京本社版掲載)

【注】年齢、記録などは本紙掲載時。