<ロンドン、リオ五輪自転車トラック日本代表・14年仁川アジア競技大会スプリント優勝 競輪選手 中川誠一郎(37=熊本)>

 五輪には2度出場できました。最初のロンドンでは100%出し切れなかったという感じで…。五輪は正直、国際大会の延長みたいなものだと思っていた。ところが、ヨーロッパでは自転車も文化だし、国技みたいなもの。会場の熱気もすごかったです。自分は普段緊張しないんですが、初めて雰囲気にのまれました。今でも人生で一番緊張したと思います。恥ずかしい話、スプリントの1本目を覚えていなくて、気付いたら負けていた。あの緊張を味わったから、今では競輪のG1でも平常心で走れているんだと思います。

 ロンドンの後、すぐにはリオへ気持ちが切り替わらなかったです。でも、その後のアジア競技大会で優勝できて、ロンドンのときに「やり切れなかった」と思ったので。2度目のリオ五輪は少し雰囲気を楽しめる余裕もありました。

 37歳での五輪は世界的にも年齢は高かったです。でも自分が「トシだな」とか「あのときが一番良かった」みたいなことを感じたことはなくて。実際に、数値的にはどんどん上がっていたし、本業の競輪でも今年は日本選手権でG1初優勝できた。デビューして17年目の今が一番強いですから(笑い)。「大器晩成だ」って、自分に長い間言い聞かせてきた通りになりました(笑い)。

 ただ、ロンドン五輪の後、僕がずっと言っていたのは「後輩が出てこないのは日本チームとしては駄目だろう」ということ。もちろん、僕にも僕の競技人生があるので、それは全力で阻止してきましたけど(笑い)。力で乗り越えて世代交代していくことは必要だと思います。

 東京五輪は自国開催なので、日本として、チームとして、もう少し競技に専念できる環境を整えてほしいですね。自転車の場合、地元枠もないので、五輪に出るためには世界大会に出て、出場枠を取らないといけない。今までなら枠取りで苦労することはなかった。でも、アジアのレベルが上がっていて、今回も枠取りにこんなに苦しい思いをするとは思わなかったです。本業の競輪もG1のような大きな大会に出るために休めない。最後の最後で枠が決まるまでは本当に苦しかったので。特に、アテネ五輪で銀メダルを取った、チームスプリントで日本が枠が取れなかったことはショックでした。せっかくの東京五輪。日本発祥のケイリンをアピールするためにも、ぜひ考えてもらえればと思います。

 最後に、30日に東京・立川で競輪界最高峰のレース「KEIRINグランプリ2016」に出場します。応援お願いします!


(2016年12月14日東京本社版掲載)

【注】年齢、記録などは本紙掲載時。