「草笛さん、聖火ランナーで横浜を走ることが決まりましたよ」と連絡があった時はうれしかったですね。横浜は私の生まれ故郷だし、戦前、戦中、戦後ずっと生きてきた所です。今は東京に住んでいますが、1歩でも横浜に入ると呼吸が楽になるような気がします。生まれ育った場所って、そういうものでしょうか? 東京五輪の開催が1年延期となって、私が走る予定だった聖火リレーも延期になりましたが、別にガッカリしていません。もう86歳ですから、多少のことでは動じません。延びようがなくなろうが、世界中の人が幸せであればそれでいい、そう思っています。

私がSKD(松竹歌劇団)に入ったばかりの頃、めったに褒めることのない厳しい舞台評論家に「舞台にギリシャ女優が1人いる」と言われたことがあります。それがきっかけで注目が集まり、その後NHKのラジオドラマに抜てきされ、女優として歩み始めました。あれから70年たった今、ギリシャから来た聖火を持って横浜を走るということは、何かがつながったようで、まさに運命と感激しています。

64年の東京五輪の時は、私は明治座の舞台に出演中で、楽屋のテレビで東洋の魔女、バレーボールの試合を見たのを覚えています。共演していた新派の名女形の花柳章太郎さんも興味をもっていらして、当時の私は人間国宝も夢中になる五輪ってすごいと驚いていました。

私はアスリートをとても尊敬しています。舞台に立ち続けるために私自身10年以上週1回トレーニングをしていますが、アスリートはそれを毎日やっている、すごいことだと思いますし、その鍛える努力に頭が下がります。新型コロナの自粛期間中はトレーニングもできず、ご多分に漏れずコロナ太りになってしまった私。今は徐々に鍛え直しを始めています。「さあ、走れ」と言われた時、しっかり走れる体にしておきたいですから。

86歳まで仕事ができる丈夫な体に産んでくれた父母に感謝し、日本の幸せを念じつつしっかり走りたいと思っております。応援お願いいたします。(320人目)