16年リオデジャネイロ・パラリンピック、17年世界選手権ロンドン大会の走り幅跳び銀メダリスト山本篤(36=新日本住設)が、切断などT63クラス決勝に出場し、6メートル41の今季ベストで2位になった。

 6月26日の練習中に左肩を脱臼し、大会主催者からは前日7日の時点で欠場と発表されていた。同日の100メートルはキャンセルしたが、この日の走り幅跳びは特別だった。

 「今日は出ることが大切だと思っていました」と山本。海外招待選手としてリオ金メダルのハインリッヒ・ポポフ(34=ドイツ)とリオ銅、世界選手権金メダルのダニエル・ワグナー(25=デンマーク)が参戦。特に長くライバル関係にあったポポフは今年8月の欧州選手権を最後に引退を決めており、今回が一緒に戦えるラストチャンスだった。

 山本は連続ファウルの後の3回目にいきなり6メートル41。1回目に6メートル38のワグナー、6メートル07のポポフを逆転した。山本が4、5回目をパスすると、ワグナーは5回目に6メートル40、6回目に6メートル41。勝負をかけた山本の6回目は6メートル08にとどまった。ワグナーと並んだが2番目の記録の差で土壇場で再逆転を許した。ポポフも4回目に6メートル21まで距離を伸ばすなど、世界のトップ3人の激戦にスタンドは沸き返った。

 山本は競技前の練習で体調を確認し、ギリギリで出場を決断した。今月30日には手術を受けることも決まっている。「気持ちが入って痛みはあまり感じなかったですね。左肩の可動域が狭くなっていたけれど、外れなかった。負けて悔しいけど、こういう戦いでT63が強くなれば面白くなるでしょう」。山本の思いの詰まった送別ジャンプにポポフは「アツシはケガをしているのに出場してくれた。彼が引退するときは、ボクが日本に来て1本だけ跳ぶつもりだ」と3位に終わってもご機嫌だった。