2022年3月4日に開幕する北京パラリンピックまで24日であと100日。

前回の18年平昌大会で出場全5種目でメダルを獲得したアルペンスキー女子の村岡桃佳(24=トヨタ自動車)が、23日までに取材に応じ、北京大会を「二刀流のゴール」と決意を語った。19年春から陸上に挑戦して今夏の東京大会の女子100メートル(車いすT54)で6位入賞。約2年半ぶりに雪上に本格復帰した日本のエースが、二刀流の経験を武器に再びメダルラッシュに挑む。

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10月のオーストリア合宿で村岡は久しぶりに雪上を滑った。ターン時の感覚が戻らず、コースを攻めるラインのイメージも以前のように浮かんでこない。2年半のブランクの影響の大きさを感じた。残された準備期間はわずか5カ月。それでも「スキーがすごく楽しい。好きだと思えた時間」と、表情は明るい。

4年前の平昌大会で大回転の金を含む全5種目でメダルを獲得して脚光を浴びた。翌シーズンはW杯年間総合優勝。その頃からスキーを楽しめなくなった。「勝って当然と自分にプレッシャーをかけてしまい、つらくてスキーから逃げたいと思っていた」。ホテルのベッドで何度も涙を流した。

19年5月、車いす陸上への挑戦を表明した。以前からチャレンジしてみたいと思っていたが、スキーから距離を置きたいという気持ちもあった。埼玉の自宅から、陸上チームのある岡山市に拠点を移して打ち込んだが、腕や上半身の筋力を必要とする陸上は、バランス感覚で勝負するスキーとはまるで違っていた。

「練習にも全然ついていけず、想像以上に走れなかった」。体幹から鍛え直し、上半身の筋力強化に取り組んで肉体をいじめ抜いた末、最初は千里の道にも思えた東京大会出場を果たし、決勝にも進出して6位入賞。「無理だと思った難しい挑戦を達成した充実感は忘れられない」。メダルには届かなかったが人間としての成長に自信を深めた。

今、陸上の効果を雪上で実感している。荒れた雪面を滑るとバタついていたが、体幹の強さで安定するようになった。北京大会は追われる立場だが「平昌は5つメダルは取ったけど金は1つだけで、ほかは負け。挑戦者という気持ちは変わらない。二刀流の挑戦は東京でスタートが切れた。ゴールは北京。メダルを目標に最後は笑って終わりたい」。その言葉に自分への期待感があふれていた。【首藤正徳】

◆村岡桃佳(むらおか・ももか)1997年(平9)3月3日、埼玉県生まれ。埼玉・正智深谷高卒業後、早大スポーツ科学部へ進学。4歳の時、横断性脊髄炎を発症し、車いす生活となる。中2で本格的にスキー競技を始める。日本選手団最年少の17歳で出場した14年ソチ・パラリンピックは大回転5位、回転9位。18年平昌パラは大回転の金を含めて出場全5種目でメダルを獲得した。

◆北京パラリンピック 2022年3月4日に開幕し、競技は5~13日まで行われる。北京と隣接する河北省張家口で開催される。北京は史上初めて夏、冬両パラリンピックの開催都市となる。スキーのアルペンと距離、スノーボード、バイアスロン、パラアイスホッケー、車いすカーリングの6競技78種目でメダルを争う。参加は45~55カ国・地域を想定し、最大736選手が出場する見通し。

 

※他の「二刀流」パラアスリート

◆佐藤圭一(セールスフォース・ドットコム) ノルディックスキー距離とバイアスロンの男子立位で代表に内定している。10年バンクーバー大会から冬季は4大会連続出場。トライアスロンで16年リオデジャネイロ夏季大会に出場も東京大会出場は逃した。

◆有安諒平(東急イーライフデザイン) ボートの混合かじ付きフォア(運動機能障害・視覚障害PR3)で東京大会に出場。ノルディックスキー距離で北京大会を目指している。本格的にスキーを始めて2シーズン目。

◆小須田潤太(オープンハウス) 東京大会の陸上男子走り幅跳び(義足・機能障害T63)で7位入賞。スノーボードでの北京大会出場を視野に入れている。