パリ五輪(オリンピック)の柔道は、ちょうど10日後、開会式の翌27日から始まる。
女子48キロ級の角田夏実(31=SBC湘南美容クリニック)が有力視される大会のメダル第1号が、日本の夏季五輪通算500個目。前回21年の東京五輪まで計96個を積み上げた柔道としても、今夏4つ目で大台の100個に到達する。目が離せない大会前半の花形競技。女子48キロ級で日本最多の5大会連続メダル獲得(金2銀2銅1)を誇る谷亮子さん(48)が、男子の鈴木桂治監督(44)女子の増地克之監督(53)と鼎談(ていだん)し、お家芸の男女14代表を紹介する。【取材・構成=木下淳】
「ミセス高市」でも勝って アグベニェヌは「ママでも金」期待/谷亮子さん2
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谷さん 鈴木監督とは04年アテネ五輪で一緒に金メダルを獲得しましたし、足技のすごさでも、世界を魅了しましたね。増地監督とご一緒した大会もたくさんありますが、94年の広島アジア大会や95年ユニバーシアード大会で、先輩が無差別級で、私が48キロ級で金メダル。よく覚えています。
鈴木監督 軽量級と重量級で行動は別でしたが、いつも初日から盛り上げてくださって。ぜひ谷さんの日本最多5大会連続メダルにあやからせてください!
増地監督 お願いいたします。先陣を切る女子から紹介させていただきます。
◆48キロ級 角田夏実
増地監督 この階級では谷さん(アテネ)以来20年ぶりの金メダルを獲得してくれるはずです。転向前の52キロ級の時代には、阿部詩選手に3度も勝っている実力。谷さんから見て、技はどうですか。
谷さん 私の146センチに比べ、かなりの長身の161センチです。そんな選手が下に潜り込んで(得意技)ともえ投げをかければ、脚が長い分、効きますよね。そこから関節技への移行も秀逸で、勝ちパターンが確立しています。日本のメダル1号が夏季五輪の通算500個目になります。確実に獲得してくれるでしょう。
◆52キロ級 阿部詩
増地監督 期待されればされるほど力を出す詩選手には、谷さんに似たスター性を感じます。今回、調整を最優先して五輪前の国際大会参加を減らしたので(世界ランクが上がらず)本番はノーシードとなりましたが、敵は油断だけです。
谷さん 試合数を減らして調整したことで、試合勘やスタミナなどをどうキープするかですね。両肩の手術を受けて良くなり、さらに安定感が増した印象。優勝は揺るがないでしょう。
◆66キロ級 阿部一二三
谷さん 17歳の時に初めて見て、ダイナミックな柔道だなと思いました。妹さんと同じく揺るぎない優勝候補ですが、五輪はその日だけ絶好調の選手が出てきますので、怖いですよね。
鈴木監督 おっしゃる通り、何が起こるか分からないのが五輪。アクシデントなく当日を迎えてもらえれば。あれだけ強いと、少しは「大丈夫」という雰囲気になってもおかしくないですが、本人も付き人も(所属の)吉田秀彦総監督もそして我々も、周囲に一切の油断がありません。地元フランスのキヤー選手がブーラ選手(古賀稔彦さんのライバル)のようで要注意ですが、どう研究されても上をいく準備をしています。
◆100キロ超級 斉藤立
谷さん 立選手とは18歳の時にお会いして、話をしました。本当に斉藤先生(84、88年に五輪2連覇の父仁さん)に、柔道も立ち居振る舞いもそっくり。日本で初の親子五輪制覇を成し遂げてほしいですね。
鈴木監督 (同じ国士舘の系譜で)生まれた時から知っていますし、勝たせることが使命。今は「斉藤仁の息子」ですが、仁先生を「斉藤立の父」に変えていかないと。その始まりが今大会。開催国の英雄リネール選手をはじめ、壁を1枚ずつ越えていって、最重量級の王座を(16年ぶりに)奪還してもらう覚悟です。
谷さん 日本柔道界100個目のメダルまでも、あと4個です。最終日は混合団体戦もありますので、皆さん、見どころ満載です!
◆パリ五輪の柔道競技 27日から8月3日まで男女1階級ずつ(最終日は混合団体戦)行われる。予選ラウンドは連日午前10時(日本時間午後5時)から。エッフェル塔がある公園内のシャンドマルス・アリーナが会場。男女平等の観点から、初めて決勝順が女子→男子、翌日は男子→女子と交互になる。日本勢は14代表のうち8人が初出場。一方で阿部兄妹、永瀬、ウルフ、素根は連覇が懸かる。
◆谷亮子(たに・りょうこ)1975年(昭50)9月6日、福岡県生まれ。小学2年で柔道を始め、福岡国際女子を最年少の15歳で制覇。人気漫画から「YAWARAちゃん」と呼ばれて人気を博した。福岡工大付高、帝京大、日体大大学院、トヨタ自動車。世界選手権は6連覇を含む7度、全日本選抜体重別は11連覇を含む14度の優勝と異次元の成績を残す。家族は03年12月に結婚した元プロ野球選手の谷佳知氏と2男。五輪は92年バルセロナ、96年アトランタが銀、00年シドニー、04年アテネが金、08年北京大会が銅。「(旧姓)田村で金、谷でも金、ママで銅」を果たした。146センチ。
◆鈴木桂治(すずき・けいじ)1980年(昭55)6月3日、茨城県生まれ。国士舘中、高、大を経て平成管財。アテネ五輪男子100キロ超級金メダル、100キロ級で出場した北京五輪は日本選手団の主将を務めた。世界選手権は無差別級など2階級制覇。12年から全日本男子のコーチ、東京五輪後の21年から監督。184センチ。
◆増地克之(ますち・かつゆき)1970年(昭45)9月29日、三重県生まれ。桑名高、筑波大からマルナカ、新日鉄。現役時代は187センチ、125キロで、全日本選手権13度の出場は11年まで史上最多だった。2度のアジア王者も。初の全日本学生優勝大会制覇に導いた筑波大の監督を経て、16年に全日本女子の監督に就任。東京五輪後、続投して2季目。
◆社告 谷亮子さんがパリ五輪で「日刊スポーツ特別コメンテーター」を務めます。「パリで金 やっパリ金」と題して、他競技も含めて五輪について思ったこと感じたことをつづっていきます。五輪5大会連続メダリストとして柔道解説にもご期待ください。



