<パリオリンピック(五輪):アーティスティックスイミング>◇7日(日本時間8日)◇チームアクロバティックルーティン(AR)◇アクアティクスセンター

【パリ=松本航】21年東京五輪4位の日本(比嘉もえ、木島萌香、小林唄、佐藤友花、島田綾乃、和田彩未、安永真白、吉田萌)がARに臨み、252・7533点で7位となった。合計は880・6841で前日7日から順位を1つ下げて5位。メダル獲得はならなかった。

金メダルはAR283・6934点で3種目すべてで1位の中国が合計996・1389とし、歓喜した。米国が同914・3421点で5大会ぶりのメダルとなる銀メダル獲得。銅メダルは3大会ぶりの表彰台となったスペインが同900・7319点で銅メダルとなった。4位にはAR3位の地元フランスが入った。

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もがき続けた3年間だった。メダリストが決まったAR後の取材エリア。主将の吉田萌は「もうちょっと落ち着きたかった気持ちはあります。隣の芝(他国)が青く見えたりもした。でも、きっと向こうも、限界の中でやってきていた」とつぶやき、新ルールでの勝者をモニター越しに見つめた。

21年東京大会を終え、指導者として五輪9大会でメダル獲得に導いた井村雅代さんがHCを退任した。同年秋に当時35歳の中島貴子HCが就任。翌22年秋にルール変更の渦に巻かれた。

混乱は結束を生んだ。全てが試行錯誤。昨夏の世界選手権後には「1度、全部コピーしてみよう」と多様性に秀でた中国をまねた。同じ曲を流し、全員で動きを模した。足の角度に違いがあり、テンポを速めて同じ尺で動きを増やしていることを知った。選手間では自然と「ちょっと変なこと言うよ? こういう動きってできるかな?」という言葉が出るなど、意思疎通は密になった。最年少16歳の比嘉もえも「何が正解か分からない。私も意見を言いやすくなった」。都内の強化拠点の食堂でも、自然と1つの机に輪ができる。物腰柔らかい中島HCが、今は「世界一のチームという自信がある」と胸を張る一体感があった。

国内でも新ルールの流れに素早く反応し、23年春の日本選手権から代表以外の選手たちも新方式を経験した。前AS委員長の本間三和子さんは「私たちの1年遅れは(強豪の)3年遅れ」。アジア全体の発展を考え、昨年9月の杭州アジア大会には世界有数の審判団を招いた。序列を覆す、できる限りの手は打った。本間さんも「彼女はみんなが助けてあげたいとなる」と中島HCの人柄を評した。

結果は願い通りではなかった。それでも新たな文化は育まれた。吉田萌は「今に満足せず、いい方向に進化していくことが大事」とかみしめた。もがいた時間で得られた財産がある。