馬術の障害飛越個人3次予選が行われ、2次予選を26位で通過した武田は途中棄権に終わり、決勝に進めなかった。5番目の障害をクリアできず、障害物を落下させる。愛馬の状態を考え、再スタートせず、無念の棄権の道を選んだ。

 愛馬バルドリーノの目を見たら、無理はさせられなかった。「頑張ってゴールする選択肢もあったけど反応が違った」と涙を流す。暑さの中の連戦。10歳と馬術の馬としては若く、経験も浅い。疲労が蓄積した中で、ムチなどで刺激を入れることはできなかった。

 初出場の前回ロンドン大会は71位と1次予選で敗退した。リオに向け、単身で英国に渡り、拠点を置く。大型免許を取得し、愛馬を乗せて連戦する日々。負け続けたときは心が折れ掛ける。そんなときは愛馬バルドリーノに草、ニンジン、リンゴなどを与えた。うれしそうに食べる姿を見ると、いやされた。

 「つらいことがあると厩舎に入って、こちらが勇気をもらってばかりだった」。3次予選進出で4年間の進化は示したが、労苦を共にした愛馬と決勝進出できなかった悔いは残る。「厩舎に行くと私のこと呼んでくれる。好きだよという目で見てくれる。本当に本当にかけがえのない大親友」。人馬一体の馬術。4年後の東京はまだ見えないが、愛馬との競技生活は続く。【田口潤】

 ◆武田麗子(たけだ・れいこ)1984年(昭59)12月14日、神戸市生まれ。甲南女子中1年で馬に乗り始める。甲南大卒業後にベルギーへ渡り、現在は英国を拠点に活動。10年アジア大会で初めて日本代表入りし、個人24位。12年ロンドン五輪は71位で1次予選敗退。家族は両親と姉、兄。父国男氏は武田薬品工業元会長。151センチ、48キロ。血液型AB。愛馬はバルドリーノ(牡、10歳)。