4月下旬、セーリング会場の「水質汚染」には言葉を失った。プカプカと浮かぶ茶色の物体に、記者が乗ったボートが囲まれた。ヨットハーバーから100メートル余りの距離にある下水口。人間の排せつ物がそのまま流れ込み、悪臭はひどく、吐き気をもよおすほどだった。高級クルーザーなどが停泊し、一見美しく見えるが、実態は下水の終着点だった。

 ボートに同乗した環境コンサルタントのマリオ・モスカテリ氏によると、グアナバラ湾に流れ込む川は「55」あり、その内「49の川が下水やゴミで死んでいる」と説明。同湾のほとりには約700万人が住んでいるというが「州政府の発表では約300~400万人の下水が流れ込んでいる」と語った。

 レース自体が行われる海域はヨットハーバー付近にある下水口から2キロほど沖合だが確実に海はつながっている。さらにビニール、サンダル、タイヤ、人形まで、たくさんのゴミが浮遊していた。ヨットにそれらが絡みつけば試合が不公平な上、転覆する恐れすらある。

 汚染された海に人が入ると「肝炎など内臓に病気が発生する恐れがある」と警告する。開幕1カ月を切った最近では、ブラジルの研究者が抗生剤に耐性を持つ「スーパー耐性菌」がリオの海岸で検出されたことを明かし、CNNが報じた。「カルバペネム耐性腸内細菌科細菌」だという。

 とてもじゃないが、競技に集中できる環境ではないように感じた。