【リオデジャネイロ10日(日本時間11日)=三須一紀】東京都知事選でも注目の争点の1つとなった「待機児童」。同じ五輪開催都市のリオデジャネイロではどうなのか。働くママに密着すると、日本と同じような問題が見えてきた。

 地球の裏側でも、ママの朝は忙しい。IT企業に勤めるジャーニ・リマ・コエリョ・フジカワさん(39)は朝5時30分に起床して、ジムに通う。帰宅後に朝食の準備をして同8時20分に、娘のジュリア・カオリ・コエリョ・フジカワちゃん(3)を抱え、車で5分の保育園に送り届ける。取材した10日は、化粧もバッチリだったが「普段、化粧は会社でやるわ」と笑った。

 東京などの待機児童問題を伝え聞くと同感するように、うなずいた。「高いお金さえ払えば保育園に入れる」状況は一緒だ。フジカワ一家は私立保育園に1カ月、約2900レアル (約9万5000円)も支払っている。夫(44)は現在、IT業を営むもフリーランスのため、収入は安定しない。その給与の50%が保育料に消えていくという、厳しい現状だ。

 公立保育園は無料だが「教育はしてくれない。ただ預かるだけ」と、敬遠されているのが実情だ。近年の不景気により、世帯収入は下がる一方で「今年中に預ける時間を昼以降にして、保育料を削る決断をしなければ」と頭を抱えた。

 保育園を利用する理由は「仕事を続けたいから」。「自分の周りのママは90%働いている」と話す。日本と同じく会社を1度辞めると、正社員での復帰は難しい。さらに産休育休は短く「私の会社では7カ月取れたが、法律では4カ月」という。

 「仕事をしていない私は考えられない」と切に語る。国内トップ3のリオデジャネイロ連邦大を出たエリートですら、この苦境と格闘する。それでも、「毎日大変だけど、子どもも好きだし、仕事が続けられて幸せ」と前向きに生活していた。

 ◆日本の産休育休 産休は産前6週間、産後8週間。育休は1歳に達するまでの間だが、一定の場合、子が1歳6カ月に達するまでの間、育児休業が認められる。一定の場合とは「保育所に入所を希望しているができない場合」など。