馬術とは:馬術トリビア③
馬は大事な〝相棒〟馬の故障や死亡で五輪出場権失う
馬術は当たり前のようですが人馬のペアで競技を行います。選手にとって馬は道具ではなく〝相棒〟です。
自転車競技の場合の自転車は道具です。ツール・ド・フランスなどのロードレースでは競技中に自転車本体が故障すると、集団の後方を走るチームカーが選手に近づきスペアの自転車を渡して選手は競技を続行します。
では馬術で五輪の代表になった人馬のうち、馬が故障もしくは死亡してしまった場合はどうでしょうか? 馬を単なる「道具」と考えれば新しい馬を用意して五輪に出場することを考えるでしょう。しかし馬はその選手とともに五輪出場権を獲得した〝相棒〟です。そのため選手は五輪出場資格を失うのです。
障害馬術で84年のロサンゼルス五輪から96年アトランタ五輪まで4大会連続で出場権を獲得したのが中野善弘(58)です。しかし彼の五輪出場回数は3回です。中野と愛馬ジャスト・ジェームスはバルセロナ五輪前の欧州での大会で好成績を残し92年5月6日に五輪代表に選考されました。ところがその2週間後の5月20日にジャストジェームスが疝痛(せんつう=馬の腹痛)により死亡してしまいます。そのため人馬コンビの規定により中野は代表から外れ、五輪への出場はかないませんでした。
75歳法華津は馬の体調不良でリオ五輪断念
ちなみに、馬場馬術でロンドン五輪に出場し、75歳でのリオ五輪出場を目指した法華津寛は、騎乗馬のザズーが体調を崩したため選考競技会に参加できず、五輪出場を断念しています。
日本馬術連盟のリオ五輪代表の発表の際も「代表選手」ではなく「代表人馬」と記載されています。こんなところにも人馬一体の精神が生きています。