昨秋の世界選手権6位の池田向希(21=東洋大)が1時間18分22秒で優勝し、東京五輪代表切符をつかんだ。

入部当初はマネジャー兼任だった選手がコツコツと力をつけ、母校にこの種目で3大会連続の五輪出場をもたらした。親戚にあたるモデルのみちょぱからは歓喜のツイートで祝福された。男子20キロ競歩での代表内定は、山西利和(愛知製鋼)に続いて2人目で、最後の3枠目はこの日2位に入った高橋英輝(富士通)が濃厚。女子は藤井菜々子(エディオン)が制して代表入りを決めた。

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レース終盤、4人ひとかたまりになっていた先頭集団が徐々にばらけ始めた。ここが勝負どころと踏んだ池田は、残り約4キロ地点で前に出てペースアップ。最後はリオ五輪出場の実力者、高橋との一騎打ちを制し、両手を広げてフィニッシュテープを切った。勝てば東京五輪出場内定という条件で底力を発揮し、「最後の選考レース。悔いの残らないように臨んだ。内定を獲得できて本当に良かった」。

昨秋世界選手権6位、そして東京五輪代表の座を射止めた大学3年生。タレントのみちょぱこと池田美優は父方の親戚と一見、華やかなイメージもあるが、実は苦労人だ。東洋大陸上部の競歩の新入生は2人だが、入学時はマネジャーと兼務の“特例”で3人目として入部している。寮では電話対応や来客待機、朝練時にはハードルやラダーを並べた。

結果を残さなければ選手を続けられなくなる危機感をパワーに変えた。雑用をこなしながら自らの練習に励み、2年時の18年5月に世界チーム選手権(中国・太倉)で優勝。帰国した2日後にも裏方業務を行うべくマネジャー室に入ったが、このときついに、コーチから選手専念を認められた。ロンドン大会の西塔、リオ大会の松永に続き、男子20キロ競歩では3大会連続で現役の東洋大生として出場権獲得。試行錯誤の末にたすきをつなぎ、「自分も伝統を受け継ぐことが出来た」と胸を張った。

母の由紀子さんによれば、「両親のどちらにも似ていない、まじめな性格」。その言葉通り、東京五輪切符をつかんでも浮かれず、足元を見た。世界選手権金で早々に代表入りした山西との実力差は認める。東京五輪の目標を聞かれても、「金メダルとはまだ言い切れない」。もっとも裏方兼務からはい上がった男は「東京五輪までには、目標は金メダルと言えるように準備していく」と続けた。

みちょぱとは会った記憶はないが「再従兄弟」という“肩書”は、競技の認知向上につなげるつもりだ。「芸能界で活躍をされている方に応援していただき、感謝している。芸能人は影響力も大きいし、少しでも競歩を知ってもらえるきっかけになれば」。東京五輪で活躍し、池田向希の知名度と競歩の認知度を一気に高めていく。

【奥岡幹浩】

◆池田向希(いけだ・こうき)1998年(平10)5月3日、浜松市生まれ。浜松積志中から浜松日体高を経て東洋大に進学し、18年世界競歩チーム選手権シニア優勝、19年ユニバーシアード優勝、同年世界選手権6位。休日にはアニメ「鬼滅の刃」を鑑賞し、原作マンガも全巻所有。好物は焼き肉。168センチ、53キロ。