東京オリンピック(五輪)のマラソンと競歩の発着点となる札幌・大通公園では8日、朝7時の気温が19・5度という涼しさだった。実施1年前に合わせ、札幌市内のコースで気象条件を計測している日本陸連の杉田正明科学委員長がオンラインで取材に応じ、男子50キロ競歩について、暑さと同時に、寒さの対策も必要になる可能性があるとの見方を示した。「可能性としては(寒さ対策を)する必要がある。気温20度以下、湿度60%程度の環境において、長時間のレースになると、後半に低体温となる選手がいることも考えられる」

4時間近くの戦いになる男子50キロ競歩は早朝5時半のスタート。札幌駅近くと繁華街すすきのを往復する。まさに市の中心部。ビルによって生まれる陰は、暑い日には恵みだが、寒空では体力を奪う。終盤に多くの汗をかけば、体温が失われるリスクが潜む。時期は真夏。基本的には暑熱対策が極めて重要だが、北の大地では寒さが敵となる可能性は捨てきれないとする。

調査は競技日程に合わせ、気温、湿度、暑さ指数、路面温度、風などをチェック。熱中症の危険度を示す暑さ指数はこの時期、東京が「運動中止ライン」を含む30度超に対し、札幌は25~28度で、この日午前は25度にも達しなかったという。確かに天気は恵まれなかったが、杉田科学委員長は「東京に比べ、涼しいのは間違いない」と述べた。

暑すぎて東京から札幌に急転したのは昨秋。もう夏の札幌コースの細かなデータは集められない状況だったが、延期の功名で可能になった。そこで分かったのは、少し意外な可能性だった。【上田悠太】