東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の発言が女性蔑視と取られる発言をした問題について、東京五輪を目指す現役の女性アスリートが心境を述べた。陸上女子100メートル障害で日本記録を持つ寺田明日香(31=パソナグループ)が5日、報道陣の取材に応じた。考えを頭の中で整理し、意見を発信することにした。多様性への理解があるリーダーを求め、「周りの方が進退について、考えていただければ」と話した。

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3日の日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議委員会で森会長が発言した全文にも目を通したという。4日には発言を撤回する会見を行ったが、「反省されていないな」との思いは拭えなかった。寺田はまず、素直な心境を述べた。

「女性がいると会議が長引くと受け取られるような発言をされておりました。女性理事を増やしていく世界的な動きにも反している。まだまだ森会長は男性社会が当たり前、女性はおしとやかでいるのが当たり前だと思われている雰囲気を感じた。女性進出は嫌なんだなと感じた。女性として、アスリートとして残念。なんで、こういう考えになってしまうのか。不思議な気持ちも混じっている」

ただでさえ、新型コロナ禍で、五輪の開催に否定的な声が多い。今回の問題で、その機運は、さらに逆風となった。

「オリンピックに関わるトップの方が、世界から反感があるような言葉を発してしまうことで、「日本でのオリンピックは大丈夫なのか」、「日本の多様性についての考え方はどういうものなのか」と思われてしまう。頑張っている選手、オリンピックを何とかしようと踏ん張ってる人もいる中で、ああいう発言は、「う~ん」と思います」

森会長の辞任を求める世論の声もある。言葉を選びつつも、明確に意見を述べた。

「森会長も今までオリンピックにたくさんご尽力をしていただいた。直前でお辞めになる選択は嫌なのではないか。ただ、そういう昔ながらの考えを、短期間で改めるのは難しい部分があるのかなと思う。そういう中で、オリンピックを迎えてしまうと、他の国の女性から、もちろん国内でも反感があると思う。周りの方が進退について、考えていただければいいんじゃないか思う。今回のオリンピックは、多様性がメインと言っても、過言ではない。そこをフラットにしっかり考えていただけるリーダーについていただけば、個人的にうれしいなと思います」

このような社会的、センシティブなテーマについて、現役アスリートがモノ言うのは難しい面もある。寺田も「正直、発言しにくい。できるだけ触れたくはない」と言う。しかし、「五輪は女性として、ママアスリートとして関わる」。考えを「いったん寝かせて」、しっかりまとめた上で、「自分の意見を発信した方がいい。若い選手が言うのは難しい。ベテランの域の私たちが発言すべき」と感じ、報道陣の合同インタビューに応じた。