新型コロナウイルス感染拡大から、東京五輪・パラリンピックが1年後の来夏に延期された。祈る気持ちで感染終息を願い、開催を心待ちにしている。64年東京五輪聖火リレーで国内第1走者を務め、来夏の東京五輪でも沖縄県聖火ランナーに決定している沖縄国際大名誉教授の宮城勇さん(78)。2度目の聖火リレーはもちろん、感染終息の日に向け、コロナ禍でもできることに日々取り組む。

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新型コロナウイルス感染拡大で、沖縄県に緊急事態宣言が発令された8月。同県に住む宮城さんはスポーツクラブに週3回のペースで通い、筋トレ、ランニング、水泳を行っていたが、自宅でのトレーニングに切り替えた。「高齢者はより自粛が必要かなと自重しました」。自宅で行うのは腕立て伏せ、腹筋、スクワットなど。週4回、約1時間行う。琉球大教育学部体育学科在学中にも取り組んだ剣道の竹刀を久々に手に取り、素振りも始めた。

五輪延期は「残念無念でしたが、世界の歴史を変えるほどの疫病の勢い考えると、延期は来年に望みをつなぐいい判断だったのでは」と、受け止めている。

コロナ禍でも、うれしい出来事もあった。前回の64年東京五輪で聖火ランナー用シューズを手掛けた「アサヒシューズ(当時は日本ゴム)」が復刻版を作り、11月に宮城さんに寄贈した。宮城さんによると、同社は全国の聖火ランナー3000~4000人にシューズを提供していたが、宮城さんの元には届かなかった。理由は今も不明だ。「沖縄のランナーたちの中でも提供されたシューズを履いて走ったという人はいないんですよ」と振り返る。

聖火ランナーとして、来年5月2日に沖縄県浦添市を走る。思わぬプレゼントに「シンプルで足にフィットして、心地よさを実感しました。64年の幻の靴に出会い、履くことができる。感無量です」。本番でも履く予定だが、シューズは今も箱の中で待機中だ。「スポーツクラブでの運動復帰が到来したら、その良さをランニングやウオーキングマシンで確かめたい」と、心待ちにしている。

競技大会は少しずつだが再開されている。スポーツ中継を見て、前向きな気持ちを持った。「スポーツの魅力は選手だけでなく、見る人、応援する人たちにも勇気や希望、明日への活力を与えるエネルギーだと感じるんですよ。五輪開催の可否を懸念するのではなく、できれば開催は必然と考えていきたい。祈る気持ちでそう思っています」。

20年以上前のラジオ英語講座のテープやテキストを取り出し、英語の勉強を再び始めた。「前回の聖火リレー後に外国に行くチャンスが何回かあった。この年齢でいつか環境が整ったら、再び英国やギリシャなどを訪ねてみたいです」。できることを前向きに取り組みながら、感染拡大が終息する日を待ち続けている。【近藤由美子】