東京オリンピック(五輪)まで2カ月を切った24日に米国務省が新型コロナウイルス感染者の急増を理由に日本に対する渡航警戒レベルを4段階で最も厳しい「渡航中止の勧告」に引き上げたことで、米国内では東京五輪開催の可能性を疑問視する声が高まっている。

ワクチンの接種が完了した旅行者でも、変異株に感染するリスクがあることや感染を拡大させる恐れがあることを理由にあげている。今月に入って米国陸上競技連盟が千葉県で予定していた陸上代表の事前合宿を「選手の安全」を理由に中止することを決めるなど、すでに影響が出ている中での渡航中止勧告は、新たな懸念材料になりそうだ。

米オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)は、米代表団の参加に影響はないと声明を発表しているが、先週アイオワ州で行われたスケートボードの東京五輪予選大会でオーストラリアの選手2人とコーチがコロナ検査で陽性が判明したことからオーストラリアチームが失格となる事態も起きており、コロナ禍での五輪開催への風当たりは一層強まっている。

そんな中、コロナの封じ込め対策に成功しているニュージーランドの公衆衛生学の教授で政府のコロナ対策チームの顧問も務めるマイケル・ベイカー氏が25日、パンデミックの最中に五輪を強行開催することは「ばかげており、多くの人命が犠牲になるだろう」とロイター通信のインタビューで語った。

オタゴ大学の感染症スペシャリストとして有名なベイカー教授は、海外から多くの渡航者が入国することと大勢の人が集う大規模イベントを開催することは、コロナ禍では“感染予防・防止”と相反する2つの行為だと批判。入国時の隔離が徹底されていない日本の水際対策はリスクの高いギャンブルで、自国のような完全な隔離措置がない国での五輪開催は無理だと断言し、世界中から10万人が入国する五輪で感染者が出ることは避けられないと「安心、安全なオリンピック」に疑問を呈している。

個人的には五輪が好きだし、一生懸命トレーニングを行ってきた選手たちには同情をしているが、「現時点で五輪を開催する理由も正当性も見いだせない」とし、命を危険にさらしてまで行うべきではないと指摘している。(ロサンゼルス=千歳香奈子通信員)