五輪2連覇した個人総合から鉄棒に絞って東京五輪出場を狙う内村航平(32=ジョイカル)は、15・766点をマークし、4度目の五輪へ前進した。

日本協会が独自に定める代表選考に関わる世界ランキングで、1位の15・000点を大きく上回り、40ポイントを獲得。4月の全日本選手権からの4演技での暫定獲得ポイントを150ポイントとし、ライバルたちから一歩抜け出した。

会場からどよめきが起こった。得点板に表示されたスコア「15・766」は、鉄棒に専念後の自己最高スコア。H難度「ブレトシュナイダー」に始まり、離れ技は優雅。最後の着地はぴたりと止めて、気迫のこもった表情で演技を終えた。

演技後に笑顔がなかったことを聞かれると、「やっぱり、終わった瞬間に満足してない。終わった瞬間に振り返り、あそこ、あそこ、あそこ、良くないところが浮かんできて」と説明した。

4日の前日会見で語っていた、「キングの境地」がそこにあった。4月からの選考会での演技に「納得できない感じがある。納得いくふうにしたい」と話していた。3回の演技ではすべてH難度の大技「ブレトシュナイダー」も成功したが、ふに落ちていなかった。順位や結果では消化しきれない、こだわりがある。細部まで理想を体現できていない。それはこの日も同じだった。

個人総合を初制覇した12年ロンドン五輪後に、その心境は生まれたという。16年リオ五輪での2連覇を果たす最強時代。「演技が余裕を持ってでき、自分の立ち位置もわかり、そこが個人総合か鉄棒かの違いで、同じような心境でいられる」。昨夏に鉄棒専念を決断し、磨き、再び達した「キングの境地」だった。

個人枠での国内選考では、跳馬の米倉英信と一騎打ちとなっている。ただ、「終わって米倉とも話しましたけど、僕はお互いに頑張って、その結果だと思う。自分の演技をすること以上に必要以上に考えない方が良いかな」とまとめた。

残るは6日の決勝の1演技。大一番を迎える。

◆個人枠の代表選考 6種目のスペシャリストが最大で2枠を争う。内村が該当する枠は1枠で、全日本選手権、NHK杯(5月、長野)、全日本種目別選手権(6月、高崎)の3大会の選考会で代表権がかかる。各演技の得点を国内外の大会での得点を元にして日本協会が作成する世界ランキングにあてはめ、順位ごとにポイントを与え、5演技の総合ポイントで競う。1位かつ0・2点差以上は40点、1位は30点、2位は20点と続く。6種目の中で1位になった選手が代表に決まる。