24分超の激闘が幕を閉じた。男女14階級で唯一、決まっていなかった代表を決める日本柔道史上初のワンマッチが行われ、17年から世界選手権2連覇の阿部一二三(23=パーク24)が勝った。19年世界王者の丸山城志郎(27=ミキハウス)を延長戦の末に大内刈りの技ありで下し、来夏の五輪代表内定を勝ち取った。男泣きした。

丸山が左、阿部が右の「けんか四つ」。互いに手の内を知り尽くす序盤は引き手争いが続き、阿部が強引に背負い投げを仕掛ける展開となった。残り1分27秒で丸山に最初の指導。ともに慎重で、過去7戦のうち6度もつれ込んでいた延長戦に、この日も突入した。

ゴールデンスコア方式の1分52秒過ぎ、丸山に2つ目の指導が入る。2分すぎには過剰な防御態勢を取った阿部に1つ目の指導が入った。8分35秒には阿部が左手を負傷し、爪の治療を受けた。丸山の白い道着には血がついていた。11分57秒(計15分57秒)には阿部に2つ目の指導。ともに、あと1つで反則負けという条件で並んだ。

右から鼻血も出た阿部。この闘いは、いつまで続くのか-。決着がついたのは本戦4分、延長戦20分を過ぎた時だった。阿部が大内刈りを仕掛けて技あり。ビデオ判定の末に主審の「それまで」。阿部の勝利が決まった。

試合後のインタビューは以下の通り。

「うん、すごい長い戦いで。気持ちと気持ちのぶつかり合いと思っていた。絶対に引かないという気持ちで闘いきって。五輪代表は決まったけどスタートライン。試合は長かったと思うけど、いざやってみると、1シーンも忘れられないような試合になった。自分の柔道が最後まで出せた。やっぱり前に出て自分の柔道をした結果。1番だと見せられたと思います。今回はやるしかない、勝ち切る、気持ちで引かない。今回の試合中も1回も、ひるんだりしたこともなかった」

「選抜体重別が流れ、この66キロ級だけ代表が決まってなくて、自分の中でもしんどい時期、モヤモヤ。この選考があったことで2回りも、今まで以上に、さらに強くなれたなと思いました。新型コロナの影響で練習はできなかったけど、向き合う時間ができた。1つ良かったのかなと思います。やっと少し恩返しできたかな。夢は五輪で優勝することで、それが1番の恩返しだけど、まずは内定できた。恩返しできたかなと思います。1番に報告したいのは…(涙を流し)1番とかはなくて、たくさんの人が支えてくれて応援してくれて。関わってくれた全ての方々に感謝したい。その人たちがいなければ、この勝ちはない」

妹詩との五輪出場へ「ホントお待たせ。やっと妹と2人で、五輪で金メダルを取ろうと言えるようになった。五輪は一番輝く舞台にしたいなと思います。やっとスタートライン。ゴールじゃないので、気を引き締めて東京五輪へ。そこで優勝することを目指したい」

過去7度の対戦で3勝4敗と負け越していたが、昨年11月のグランドスラム(GS)大阪大会に続く2連勝。7戦中6戦が延長戦にもつれていた、16年リオデジャネイロ五輪の前年から続いてきたライバル対決…“令和の巌流島決戦”を完結させた。

【峯岸佑樹、木下淳】

<柔道男子66キロ級代表決定戦の試合経過>

▽2分33秒 丸山指導1

▽延長1分50秒 丸山指導2

▽同2分1秒 阿部指導1

▽同8分35秒 阿部左手中指治療

▽同12分 阿部指導2

▽同18分19秒 阿部顔出血治療

▽同20分 阿部優勢勝ち(大内刈り)