24分超の激闘が幕を閉じた。男女14階級で唯一、決まっていなかった代表を決める日本柔道史上初のワンマッチが行われ、17年から世界選手権2連覇の阿部一二三(23=パーク24)が勝った。19年世界王者の丸山城志郎(27=ミキハウス)を延長戦の末に大内刈りの技ありで下し、来夏のオリンピック(五輪)代表内定を勝ち取った。男泣きした。

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88年ソウル五輪柔道男子65キロ級銅メダリストで阿部を日体大時代に指導した山本洋祐氏(60)は、教え子の「準備力」を絶賛した。

コロナ禍で4月の選考大会が延期になり、約8カ月の時間があった。阿部は所属でのトレーニングや自身で道場を借りるなどして柔道の勘を取り戻した。山本氏は「選考が延びたが、常にプラス思考で取り組んでいた。心が折れることもなく、出稽古でも『もっと強くなる』と自身に言い聞かせて強い相手としか対戦しなかった。これまでで最高の準備だった」と評価した。

丸山に黒星を喫した昨年の2戦は、けがに悩まされていた。4月の全日本選抜体重別選手権1回戦で左脇腹、8月の世界選手権前には左足首を負傷。山本氏はこの日に向け「けがをしないで仕上げるのが一流」と、万全な状態で臨むよう伝えた。これまで以上の入念な準備を心掛け、過去は減量に苦労したが、今回は1カ月前に69キロまで落とした。試合勘を取り戻すため、より試合当日に近い体重で稽古に励んだ。短時間集中日と長時間の技習得日に分けてメリハリをつけ、決定戦に照準を合わせた。

決戦は12月13日で、名前の「一二三」が入っている。山本氏は「運も味方にしたかった。目標であるきょうだいで五輪優勝に1歩近づいたがこれで終わりでない。来夏の大一番に向け、綿密な準備を進めてほしい」と教え子に呼び掛けた。【峯岸佑樹】