東京五輪・パラリンピック大会組織委員会が、来年7月23日の五輪開会式(国立競技場)の入場行進における参加者の削減案の1つとして、従来より最大75%減らす案を検討していることが19日、関係者への取材で分かった。

新型コロナウイルス対策の一環。実現すれば史上初の試みで、安心安全な大会開催をアピールする狙いがある。IOCは希望する選手は原則全員、入場行進に参加させたい強い意向を示している。

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組織委は今秋に入り、大会の顔となる開会式についてIOCと事務レベルで話し合いを続けてきた。その中で組織委は、入場行進の人数を従来より最大75%削減する案を検討。過去大会では各国選手、役員で1万人前後が参加していた。

理由の1つは密を回避するコロナ対策。関係者によると特に、行進前に選手が待機する場所がトンネルで密になりやすい。行進本体も含め縦横で各1メートルのソーシャルディスタンスを取りつつ、従来通り約2時間の行進時間を維持しようとすると、最大75%と算出された。行進を2時間として計算した理由はIOCが売却した放映権。式典時間を極端に短縮すると、放送局の利点が薄れるためだ。

もう1つは五輪の簡素化を全世界に分かりやすく発信するため。組織委の森喜朗会長は18日、IOCコーツ副会長との会見で「300億円削減したが少ないとの評価もある。従来と違うと思われるのは行進」と主張。森会長は延期決定直後からコロナ禍の五輪の在り方を示す上で開会式の改革を訴えてきた。選手より役員が目立つ行進のイメージを変えたい思いもある。

一方のコーツ氏は「伝統は変えたくない。全選手に行進機会を与えたい」と意見が食い違った。17日にはバッハ会長が開会式が開かれる国立を視察した際、式典縮小の必要性を問われたが「選手の大きな経験を必ず担保するセレモニーにしたい」と消極的だった。

ただIOCも部分的に折れつつある。従来は辞退選手の代わりに各国役員が行進に参加できる制度があったがそれを禁じ、上限を6人とした。コーツ氏は自身が会長を務めるオーストラリア・オリンピック委員会の方針として「選手は競技の4、5日前に到着し、終了後は1、2日で帰国する。選手村に無駄に滞在しない」と説明。関係者によると近くIOCが、この滞在ルールを各国オリンピック委員会に通達する方針。

これらを踏まえコーツ氏は「参加者は自然と減る」と主張する。ただ、選手が極端に少なく開閉会式のどちらかに選手が不在になってしまう小国には特例が必要との見方もある。

バッハ会長来日で来夏の五輪開催を強くアピールする形となったが、日本でも新型コロナの感染が再拡大し、国民の不安は増している。開催へ向け共感を広げるためにはIOCも慣例にとらわれ過ぎず、時代にあった柔軟な対応が求められる。

 

◆延期決定後の五輪開会式を巡る経緯

4月 簡素化の象徴として五輪パラの開閉会式を合同でやる案が、演出家チームの一部で浮上した。

初夏ごろ 組織委がIOCに対し、行進人数を各国1種目ごとに1人とし、式典自体を約2時間40分に短縮したいと提案したが、受け入れられなかった。

7月 森会長が記者団の取材に、開会式の時間短縮は放映権の問題でIOCから断られたことを明かした。

11月 来日したバッハ会長が国立を視察した際「開会式はアスリートにとって本当に意味がある。人生の非常に大きな経験。必ずそれを担保するセレモニーにしたい」と発言。翌日のコーツ副会長もバッハ氏に追随するように、希望する全選手の行進参加を推奨。一方の森会長は「(コロナ禍で)世界の選手が本当に行進に参加したいのか」と話し、各国オリンピック委員会を通じた調査をすべきと提案した。