東京オリンピック(五輪)・パラリンピック組織委員会の会長に就任したばかりの橋本聖子参院議員(56)が19日、自民党に離党届を提出した。党紀委員会の22日の審査を経て正式に受理される。

橋本氏はこの日午後5時過ぎ、日刊スポーツの取材に議員辞職については否定した。午前は離党を否定していたが一転、五輪の政治的中立性の観点から野党の批判を受け、午後に離党の意思を固めた。国会審議への影響も考慮し、判断した。

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「会長としてせっかく良いスタートを切ったのに出ばなをくじかれるとまずい」。自民党関係者はそう漏らした。橋本氏が就任会見を行った前日18日、同関係者は本人に「離党した方が良いかもしれない」と話していた。橋本氏もその際、離党の考えを持ち合わせていたという。

しかし、関係者によると選挙が近いことから党北海道連から離党を慰留されたといい、この日午前、橋本氏はその旨を受け離党を否定。これが野党を刺激した。4月の北海道衆院2区の補選や秋までに行われる衆院選に影響があるとし、立憲民主党の安住淳国対委員長が会見で厳しく批判。この日昼ごろ、橋本氏が議員会館をあいさつ回りしていると、野党議員の部屋では雰囲気が悪く、安住氏には直接、離党を求められた。

東京都の小池百合子知事は定例会見で議員辞職や離党を求める声が出ていることに「政治的中立性は大切にすべきだ。国民に納得できる説明も求められる。分かりやすい形が望ましい」と話していた。

橋本氏は都内で日刊スポーツの取材に応じ、「昨日疑念を持たれないようにすると会見で強く言った。その私が疑念を持たれてはいけないと思い、離党届を提出した」と理由を語った。道連会長も辞任する。この日午前まで、離党の意思を表明していなかった点については国際オリンピック委員会(IOC)の基準を見て、判断していたという。

今後は、組織委会長と国会審議の両立ができるのかと野党が議員辞職を求める可能性もある。橋本氏は「組織委会長と国会議員は兼任できることは確認できた」と話し、議員辞職はしないと明言した。ただ、橋本氏は各政党が獲得した得票数に応じて候補者に議席を配分する比例代表制で当選しているため、自民党を離党したら、議員辞職すべきと指摘する声が上がる可能性もある。

比較的、国民には好印象に映った橋本新会長の就任会見だったが、わずか1日で懸念していた党籍、議員継続問題が噴出。ここで再び対応を誤れば、五輪の開催自体が危うくなる。そうならないためにも迅速に離党届を提出したが、一時は党にとどまろうとした姿勢が国民にどう映るかが懸念される。【三須一紀】

<橋本氏の動き>

午前10時すぎ 橋本氏が自民党本部を訪れ、二階俊博幹事長と面会

午前11時 面会後 報道陣の取材に応じ、離党や議員辞職を否定。「疑念を持たれないようしっかりと行動する」

その後 立憲民主党の安住淳国対委員長にあいさつに出向く。安住氏はこの場で、橋本氏に自民党離党の必要性を伝える

午後1時ごろ 組織委員会で職員らにあいさつ

午後2時すぎ 小池都知事が定例会見で橋本氏の今後の身分について「分かりやすい形が望ましいのではないか」と述べ、政治活動と一線を画す必要性を指摘。

同 橋本氏が離党の意思固めるの一報

午後3時半 丸川珠代五輪相との新旧大臣引き継ぎ

同4時ごろ 自民党本部を訪れ、離党届を提出。「所属政党に所属を続けていては(多くの方に)理解をしていただけない」

同4時45分 都庁で小池都知事に面会