東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長(56)が18日、開閉会式の演出を統括するクリエーティブディレクター佐々木宏氏(66)の辞任を受諾した。橋本氏は都内で会見し、佐々木氏がタレント渡辺直美(33)の容姿を侮辱する表現を演出チーム内のLINEに送っていたことに「不適切で大変遺憾」と話した。開会式までわずか4カ月余りでの後任人事は「佐々木チームを維持しながら新体制をスムーズに整える」と現体制、計画を踏襲する考えを示した。

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佐々木氏の辞意表明から一夜明け会見した橋本氏は、冒頭あいさつで即座に辞任受諾を公表した。先月、女性蔑視発言の責任を取り辞任した森喜朗前会長の時のように、対応が後手に回れば25日に出発式を迎える聖火リレーに水を差す。低空飛行の五輪支持率をこれ以上、下げるわけにはいかなかった。

17日夕方、対応した組織委の広報担当は「事実関係を調査中」と説明したのみで「佐々木氏の処遇は明日(18日)午後から夕方の会見で説明する」と、スピード感に欠ける対応だった。しかし、世間の反応から事態を重く見た組織委は18日午前0時30分ごろ、佐々木氏の辞意が書かれた謝罪文を報道各社に送付。橋本氏の会見も正午に前倒しされた。

佐々木氏は演出チーム内のLINEに渡辺がブタに変身する演出案を送付したことが週刊文春の報道で明らかになっていた。「オリンピッグ」などと書き、ブタの絵文字まで使い、チーム内の批判を浴びて撤回に追い込まれた。橋本氏は「女性蔑視であり容姿を笑いものにすることは絶対にあってはならない」と断じた。

かねて水面下で火種となっていた佐々木氏と前演出チームの振付家MIKIKO氏(43)の確執についても会見で質問が出た。MIKIKO氏が昨年11月に辞表を提出していたことについて武藤敏郎事務総長は事実だと認めた。ただ「我々は慰留をした」とも語った。前チームは同12月に解散したが組織委はメンバー7人全員の了解があったと説明。その時点でMIKIKO氏の本心が説明されず「隠蔽(いんぺい)では」と指摘された武藤氏は「私から伝えるのはプライバシーの問題で不利益。ご本人から話すことが筋」と主張した。

ある組織委幹部は「これが尾を引かなければいい…」と不安を吐露。コロナが収まらない中、組織委内部の失策が止まらない状況に、国民の五輪熱は冷め続ける一方だ。【三須一紀】