東京オリンピック(五輪)・パラリンピックを契機に海外選手らと交流するホストタウン事業に関し、12日までに少なくとも34自治体が、事前合宿や交流事業での選手受け入れを断念したことが政府関係者の話で分かった。新型コロナウイルスの影響や感染対策の負担が主な理由だ。

この日はメダル有力な米国陸上チームが千葉県内で開幕前の7月上旬から8月上旬までを予定した事前合宿を中止することが判明。米国陸上競技連盟は「新型コロナウイルスの収束の見通しが立たない中で、選手の安全面に懸念が生じているため」と理由を説明した。当初、同県成田市や佐倉市、印西市は120人規模の受け入れを想定していた。だが、五輪延期が決定した昨年3月以降、具体的な調整は進んでいなかった。米国陸上チームは100メートル金メダル候補のガトリンら有力選手がひしめく。滞在中には公開練習や市民との交流を検討していただけに関係者のショックは大きい。

この日はオーストラリア飛び込みチームも新潟県長岡市での事前合宿を中止することも分かった。長岡市の磯田達伸市長は「国内の感染状況や選手の健康と安全を考えるとやむを得ません。大会に向けた選手たちの努力が少しでも報われるような状況になることを願っています」などとコメントした。

埼玉県上尾市で予定したオーストラリアの柔道チーム、福井県鯖江市で予定した中国の体操チーム、兵庫県神戸市で予定したニュージーランドの競泳チームなど、コロナ禍の収束が見えないこともあり、各地で事前合宿が中止されている。現段階でコロナの感染収束の見通しが立たず、今後も選手の受け入れを断念する自治体は増えそうだ。

◆主な米国陸上代表候補 男子100メートルでは、世界選手権銀メダルのジャスティン・ガトリンは39歳にして健在で、15年世界選手権銅のブロメルは今季世界最高となる9秒88をマークし、故障から完全復活の気配。男子200メートルでは19年世界選手権金のノア・ライルズ、男子400メートルでは日本人の母を持つマイケル・ノーマンも金メダルの有力候補。スプリント、跳躍、投てきと多くの種目でメダルが期待される選手が多数いる。