快晴のヘラ神殿で東京五輪の聖なる火が採られた。32人の巫女(みこ)の1人が凹面鏡にトーチをかざし、太陽光から採火。古代オリンピック競技場へ火を運んだ32人は、伝統的な音楽に乗せて演舞。その後、国立競技場で7月24日に行われる開会式まで135日間の聖火リレーがスタートした。

女性として史上初めて第1走者となったのは、16年リオデジャネイロ五輪射撃金メダル、地元ギリシャのアナ・コラカキ(23)。第2走者を務めた04年アテネ五輪女子マラソン金メダルの日本の野口みずき氏(41)は笑顔で「一生忘れない」と、16年ぶりのギリシャの土を踏みしめた。

当初IOCやギリシャオリンピック委員会、東京大会組織委員会、招待客ら2000人規模の予定だった採火式は、100人程度まで規模を縮小。座席も離して配置するなど「聞いたことがない」と関係者がいうほど異様なムードだった。それでも、組織委の遠藤利明会長代行は式典あいさつで「新型コロナが全世界で拡大する中、万全の態勢でオリンピックを迎える」と力強く宣言した。

野口氏も「無事に東京大会が開かれることを祈って走った。一刻も早く、前向きになることを願っている。(感染拡大が)収まらないことはないと希望を持ちたい」と、五輪発祥の地で力を込めて言った。(オリンピア=三須一紀)