来年3月に始まる東京オリンピック(五輪)の聖火リレーについて大会組織委員会は、出発式などを事前予約制とする検討をしていることが15日、複数の大会関係者への取材で分かった。新型コロナウイルスの感染防止策の一環で、会場内での観客の密集を避ける狙いがある。

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五輪聖火リレーの出発式は来年3月25日、福島のサッカー施設Jヴィレッジ(楢葉町・広野町)で行われる。第1走者は、東日本大震災が発生した11年にサッカー女子W杯で初優勝した当時の「なでしこジャパン」。歴史の1ページに刻まれるイベントだけに、多くの来場者が予想される。

コロナがなければ基本的に自由入場だった出発式会場。ウィズコロナではその時点の感染状況を踏まえた政府の「催し物の開催制限」をもとに、会場内の密集を避ける対策を取ると、12日のコロナ対策調整会議で確認した。

事前予約制はその具体策の1つ。47都道府県を回る聖火リレーの各出発式(ミニセレブレーション)各到着式(セレブレーション)でも実施するよう検討している。大会本番時にパブリックビューイングなどを実施するライブサイト会場も同様。

大会チケットを持たない全国の人々にとって聖火リレーは五輪の雰囲気を生で感じられる貴重な機会。リレーの各式典は人数制限される可能性がある一方で、公道を走るリレーの道中は、大声を出さないことやマスクの着用、社会的距離を保つことなどを呼びかけるにとどまる予定。

また、聖火ランナーの感染症対策としては対人距離を確保する具体案として、聖火を受け渡す際の「トーチキス」のやり方を見直すことなどが検討されている。一方で、社会的距離が保たれている前提で、ランナーのマスク着用義務は緩和する方向。

政府は大会本番時の外国人チケット保有者は特別入国措置を検討している一方で、3月から始まる聖火リレーの外国人ランナーには措置の緩和はせず、2週間の隔離を課す方針。組織委は今後、47都道府県の実行委員会と協議の上、年末までに聖火リレーの具体的な感染予防策を策定し、公表する。

◆聖火リレー 当初、20年3月26日にスタートする予定だった。9月末発表の新日程によると、21年3月25日に福島県のサッカー施設Jヴィレッジ(楢葉町、広野町)を出発。当初計画された121日間の日程や決定済みの約1万人のランナー、47都道府県のルートや通過順は維持する。パラリンピックの聖火リレーも運営計画は従前通りで、同8月17~24日に競技会場のある静岡、千葉、埼玉、東京の4都県で行われる。採火式などは43道府県で同12~16日に行われる予定。

当初の計画では、国内第1走者を11年サッカー女子W杯ドイツ大会で優勝した日本代表「なでしこジャパン」メンバーが務める予定。各自治体では一般公募のほか、ゆかりのある著名人も多数ランナーに選出しており、今年3月に亡くなったタレント志村けんさん(享年70)も東京都のランナーに選ばれていた。