東京オリンピック(五輪)・パラリンピックに参加する選手団に、新型コロナウイルスワクチンが無償提供される。「安心、安全」な大会実現への切り札として関係者の期待は大きいが、一般接種が進まない中「五輪優先」への批判も根強い。そんな中、医療従事者枠で既に接種した看護師でバレーボール選手の米村尊(34=ヴィアティン三重)が18日までに日刊スポーツの取材に応じ、体験談を語った。<1>五輪開催の場合はできるだけ早い接種を<2>運営側の説明不足により、対象のアスリートが発言しづらくなっていることへの懸念、この2点を訴えた。【聞き手=平山連】

米村はVリーグ男子2部のヴィアティン三重でリベロとしてプレーしながら、三重県の桑名市総合医療センターに看護師として勤務している。これまで、ドライブスルー方式のPCR検査に立ち会ったりし、現在は集中治療室の患者の対応に当たっている。

-ワクチン接種はいつ

米村 (看護)師長から1人1人呼ばれて、医療従事者枠のワクチンがあると説明を受けました。師長からは「受けてもいいし、受けなくてもいい」と言われましたが、僕は3月17日と4月9日に受けました。

-副反応は

米村 1回目の時は翌日もオフ(練習休み)だったけど、(接種した)肩が痛くて本当にしんどかった。2回目の翌日は練習試合だったんですけど、朝起きたら着替えをすることができないほど、肩が上がらなかった。誰かに思いっきり殴られたような、筋トレで追い込んだ時みたいな感じで、よりひどい症状が出たんだと思いました。練習試合にも参加しませんでした。

国際オリンピック委員会(IOC)と国際パラリンピック委員会(IPC)は今月上旬、東京五輪・パラリンピックに出場する選手団を対象に、米製薬大手ファイザー製のワクチンが無償で提供されると発表した。全選手団が対象で、国民への供給計画とは「別枠」という。各国・地域から参加する選手は五輪が1万1000人、パラが4000人と見込まれる。日本選手団は選手約1000人、監督・コーチ約1500人の計2500人規模が対象となる。

-選手目線で、接種する場合の留意点は

米村 ワクチン接種の日を決めたら、その後1週間はオフが望ましい。接種翌日は、最低でも練習は休まないといけない。僕の場合2日後には動けるようになったけど、パフォーマンスは80%くらい。接種後の体の反応も踏まえて、対応に当たった方が良い。

-1週間も練習を休むと影響は大きそうだが

米村 そうなんですよ。だから、打つなら早く打った方がいい。

-選手団へのワクチンは「別枠」と強調されるが、世間の反応は厳しいものがある

米村 高齢者や一般の方をないがしろにして、アスリートを優先しろと言っているわけではありません。オリンピックがもし行われるのであれば、選手たちの大会時のパフォーマンスを考えて、できるだけ早く接種した方が良い。

-国のワクチンの接種計画に関する説明不足がアスリートに向いているのでは

米村 そうですね。アスリートたちがものを言いづらくなっています。表舞台に立つ人も、みんな慎重に言葉を選んでいて、息苦しい世の中になっています。とにかくコロナが終息することを願っています。

◆米村尊(よねむら・たける)1986年(昭61)10月1日、福岡県生まれ。元女子日本代表の竹下佳江さんに憧れ、中学1年でバレーボールを始める。福岡・京都高-長崎大医学部でも競技を続け、卒業後は選手と看護師の両立を目指して活動。18年に三重加入。日本代表招集歴はない。167センチ、67キロ。座右の銘は「成功する人は成功するつもりで動いている」。